みずきりょう の:エクステリア&ガーデンメモ NO3,088

「納得!エクステリア講座」第20回・・・砂漠の中のオアシス「中東風」とは?

エクステリアの代表的デザインについて検証中。この項では、「モダン系」「南欧風」に続き「中東風」を取り上げます。

<ペルシャ文明が生み出した人工のオアシス>

エクステリア(住まいの屋外空間)における「中東風」デザインとは、どのようなものを指すのでしょうか。実は、かなりの難題と言わざるを得ません。ペルシャ文明と砂漠と言う特殊条件が生み出した、「ペルシャ式 」or 「サラセン式」式と呼ばれる庭園様式が元となったデザインで、本格的なものが日本で造られることは皆無に等しいからです。

ただ、水を重視した構成・代表的空間「パティオ」・繊細な造形美など、多くの優れた面を持っている為、「中東風」デザインのファンは多く、そのイメージをコーナーに取り入れるなど、無視できぬ存在となっています。以上のような事情により、あえてここでは、<本来の「中東風庭園」とは何か>を提示するに留めます。それをヒントに、独自の「中東風」にチャレンジしてください。

「中東風」デザインの原点は「ペルシャ式庭園」と考えてください。今も多くの名園が残されていますが、最も著名なものとして、「タージマハル」(インド)、「アルハンブラ宮殿」(スペイン)を上げることが出来ます。本来の中東エリアだけではなく、インドやヨーロッパにもその痕跡が残る理由は、ペルシャや後のイスラムに一時期征服されて為。

庭園の基本構成は、1:中央に噴水があり・それの廻りを十字の水路が走る幾何学鋼製 2:周囲を建物か塀で囲む(この様式を「サラセン式庭園」とも言う)・・・この2点。結果として、「中東風」≒「パティオ」(スペイン語で中庭)のイメージが出来上がりました。また、華奢とも思える柱・細かな幾何学的模様(彫刻)など、造作が極めて繊細で、ユーロッパのゴシック様式などと対極にあるデザインとも言えます。

ここで欧米の庭園に興味をお持ちの方なら気付く点も。そう、イタリアの「露段式庭園」、フランスの「平面幾何学識庭園」との類似点が多いと言う事。理由は、ユーロッパの庭園に「ペルシャ式庭園」が大きな影響を与えたため。勿論、デザイン・構成面だけではなく、外部から水を引き込み・水路や噴水を作ると言った技術面にも、「中東」(ペルシャ)に技術が参考にされたと考えて良いでしょう。また、前項の「南欧風」との類似性も、その歴史を観る(イスラム統治時代があった)と当然の事。

最後に「中東風」のキーワードを列記。閉鎖空間(サラセン式)・水(人工のオアシス)・幾何学構成・パティオ・繊細(ある意味華奢)なデザイン・白が基調、etc

そこで本日の一口アドバイス。

「タージマハルやアルハンブラをイメージしよう。そして、独自の中東風を!」

(みずき りょう)

1024px-Taj_Mahal,_Agra,_India_edit3[1]

 

 

 

 

 

 

「タージマハル」・・・世界一美しい建造物とも。その庭園部分は、典型的な「ペルシャ式」or「サラセン式」と言われる構成となっている。

 

Taj_site_plan[1]

 

 

 

 

 

 

「タージマハル」の庭園部構成図・・・中央に噴水・十字の水路・水路に即した4か所(田の字型)の庭園(陸)部、そして全体を塀で囲む(サラセン式)。これが「ペルシャ式庭園の基本構成。

 

Spain_Andalusia_Granada_BW_2015-10-25_17-22-07[1]

 

 

 

 

 

 

 

「アルハンブラ宮殿」内の「パティオ」・・・「ペルシャ式庭園」の流れを汲むが、ユーロッパの影響もあり?アレンジされた構成となっている。また、基調色も地元の土(素材)の影響で白ではなく赤系に。