みずきりょう の:エクステリア&ガーデンメモ NO3,024

「世界のガーデン」 第三章:9ヶ所のペルシャ式庭園①

第5回:ペルシャ式庭園の様式と特性!

庭園のルーツを探ると、メソポタミア文明から生まれたものが最も古く、かつ資料も多数残されている事が分かってきました。つまり、BC4,000〜BC3,000年頃まで遡れると言う事。しかし、それはあくまで文献・伝説等によるのもので、現物が確認されたわけではありません。

では、現物か遺跡が残っている(現時点での)最古の庭園とは。すでに紹介した通り、現時点ではペルシャ(現イランと書の周辺が中心)文明草創期の首都「パサルガダエ」に造られた庭園(BC550〜BC500年頃)で間違いなさそうです。

以上のような歴史背景を踏まえ、この「世界のガーデン」シリーズも「ペルシャ式庭園」からメスを入れていく事にします。そして、ありがたい事に「ペルシャ式庭園」は現存するものも多く、加えてその代表的9作品が世界遺産に指定され、比較的資料も入手しやすくなっています。要するに、<世界遺産9作品の内容を探れば、ほぼその概要が分かる>と言う事。従って、次項から同9作品の紹介作業に入ります。

ただその前に、「ペルシャ式庭園」とは現在のイランとその周辺から起こった、「ペルシャ文明」のエリア内に造られた庭園の単なる総称なのでしょうか? その他の共通点は無いのでしょうか? 実はこの点も極めて明確で、<「ペルシャ式庭園」には明確な作庭様式>が定められています。つまり、この様式から外れたものは、「ペルシャ式庭園」とは呼べなくなると言う事。逆に言うなら、現代の作庭家が同様式を順守し庭園を造れば、「ペルシャ式庭園」を蘇らせたと言う事になるでしょう。

ではその様式とは? 1:四分割形式になっている 2:中央に池がある 3:4つのエリアを水路で分けている 4:正面に宮殿がある・・・と言ったもの(図面参照)。ちなみに、「パサルガダエ」庭園も既にこの様式が採用されていました。

ではなぜこのような様式となったのでしょううか。どうやら「エデンの園」を模したもので、古代のペルシャ人はこの形が<理想郷>と考えていたようです。そんな形状の中で、池・水路など水が極めて重要な役割を果たしています。砂漠の民であるペルシャの人々にとっては、ある意味当然のことと言えるでしょう。

いずれにしても、「ペルシャ式庭園」は<建物の単なる付帯物ではなかった>と言う事。付帯物どころか、庭園こそが理想の空間で、そこで過ごす時こそ至福に時間と考えていたようです。だからこそ、「ペルシャ文明」発祥と共に「ペルシャ式庭園」が造られ、都市の最重要空間の一つとなっていたのでしょう。

ペルシャ式庭園

 

 

 

 

 

 

 

「ペルシャ式庭園」の作庭様式を表した図・・・4分割形式が最大の特色で、その境界に池(中央)・水路が・・・

 

パルサガエ庭園遺跡

 

 

 

 

 

 

「パサルガダエ」の庭園遺跡・・・BC550〜BC500年頃の最古の庭園遺跡にも、既に四分割様式が採用されていた。

 

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「タージマハル」(インド)・・・世界一美しく贅沢な建造物と言われる「タージマハル」にも「ペルシャ式庭園」が併設されており、ペルシャの影響を強く受けていたことが分かる。