みずきりょう の:エクステリア&ガーデンメモ NO3,026

「世界のガーデン」 第三章:9ヶ所のペルシャ式庭園④

第8回:謎多き「フィン庭園」!

世界遺産に登録されている「ペルシャ式庭園」。4ヶ所目の紹介は「フィン庭園」。

「フィン庭園」はイランのエスファハーン州北部にある都市カシャーンにあります。同市は人口約270,000人で、カヴィール砂漠に隣接しており、典型的な砂漠の中の都市。従って、同庭園もまた砂漠の中の理想郷と言う事が出来ます。

「フィン庭園」は「サファヴィー朝」(16〜18世紀)から「ガージャール朝」(18〜20世紀)にかけて建設されました。つまり、かなりの長期間にわたり変化し続けてきたわけで、その間1743年の大地震での大破損、「ガージャール朝」2代目の「ファトフ・アリー・シャー」(在位:1797〜1834年)による増築などが主要な記録として残っています。また、「ガージャール朝」の近代化を進めた大宰相「アミール・キャビール」暗殺の舞台(浴場で殺された)にもなりました。庭園自体の素晴らしさと同時に、その歴史に触れてみる事で、存在感がさらに増すのでは・・・

「フィン庭園」は「サファヴヴィー朝」以前から存在していたとされていまます。また、カシャーン以外の場所から移設されたと言う説もありますが、残念ながらそのルーツは殆ど明らかになっていません。また、上記事項以外にも度重なる増築・放置など数奇な歴史を辿ったようですが、謎の部分も多い庭園とも言えるでしょう。

「フィン庭園」の構造を見ると、メインとなる中庭は4ヶ所の塔を持つ城壁で囲まれ、2.3ヘクタールの規模を持ちます。また、メインの庭(中庭)に至るには、入り口となる建物を通り、前庭とでも言うべき庭園を通り、さらに中庭への入り口となる建物を通過しなければなりません。そして、前庭には細い水路・中庭に至る建物には大きな池(プール)、中庭の中心部には池(プール)兼水路・噴水などがあり、他の「ペルシャ式庭園」同様(あるいはそれ以上に)、水が贅沢に使われています。

にもかかわらず、現在もポンプ設備(機械)等は使われていません。このようなことが出来るのは、近接している丘(高台)の豊富な水を活用しているからで、ペルシャ時代から極めて高い<水利技術>を持っていたことが分かります。世界のどの庭園を見ても、水を有効利用しています。しかし、「ペルシャ式庭園」は別格とも言える存在で、ヨーロッパの庭園水利技術にも大きな影響を及ぼしたと考えられます。

なお、「フィン庭園」は1935年にイランの国家財産の一つにリストアップされ、2007年にユネスコの世界遺産に指定されました。

入口付近

 

 

 

 

 

 

 

 

入口部分となる建物

 

前庭

 

 

 

 

 

 

入口となる建物と中庭に至る場所にある前庭(?)

 

第二建造物

 

 

 

 

 

前庭(?)とメインの中庭を結ぶ建物。大きな池(プール)を持つ

 

Fin Garden, Bagh-e Tarikhi-ye Fin. Kashan, Iran.

Fin Garden, Bagh-e Tarikhi-ye Fin. Kashan, Iran.

 

 

 

 

 

 

 

中庭(メイン庭園)。2.3ヘクタールの規模を持つ