「木の文化」は、まだ生きている(飴村雄輔著) 連載第3回

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1:何故、木材は使われなくなったのか①

 

地域色が無くなった街並み

最近の日本の街並みは地方色がなくなったように感じます。地方風土に合った住宅様式やそれを取り巻く道路や街路樹、河川や田園、家屋など、地域風景を車窓から楽しんだ時代が懐かしく思い出されます。

今は地域を問わず、立ち並ぶ住宅も形もサイズも色も、みな同じような顔で同じ向きに並び、どこでも見られるような街並みがどこへ行っても当たり前のように並んでいます。

写真-01昔の美しい河川敷の景色も今は分譲住宅群へ (1)

 

 

 

 

 

昔の美しい河川敷の景色も今は分譲住宅群へ

 

 

都市周辺部には高級住宅街と呼ばれている地域があります。こういった地域を車で移動しても、奇抜な外観デザインと派手な色使いをした建物や、圧倒的な質量間の建築物は確かにありますが、「バランスの良い美しい建物」と言うものを見かけません。

図-01奇抜なデザインと質量感の住宅

 

 

 

 

 

 

奇抜なデザインと質量間の住宅

 

 

地域を問わず、民家や町屋など、昔の木造の建築物は小さくても生活感の味わいがあり、何と言ってもそれなりの優しさと美しさを備えていたように思います。

かつては街並みにもそれぞれ地域色があり、どの地方にもその地域の文化が感じ取れる風情が漂っていました。しかし今は、地域色のある美しい町並みは、特に保存されている地域以外では、すっかり見なくなりました。これが高度成長期から量産されて来た住宅と街の形であり、実態なのです。

写真-02旧街道沿いの昔ながらの木造建築の並び (1)

 

 

 

 

 

旧街道からの昔ながらの木造建築の並び

 

 

材料仕様も、用途に特化し開発された無機質な建材製品が続々と登場して、建築物の内外装を問わずあらゆる箇所が既にこれらの商材で埋め尽くされている現況があげられます。見える範囲では木材や土、石のような自然素材がすっかり姿を消してしまっているのです。何故自然素材は使われなくなったのか? 建築材料から木材をはじめ土、石などの自然素材か遠ざけられ使われなくなった事は、これが果たして「文明の進化による自然な時代の流れ」として素直に受け止めるべきなのでしょうか?

図-02無機質な建材に埋め尽くされた仕様

 

 

 

 

 

無機質な建材に埋め尽くされた仕様