みずきりょう の:エクステリア&ガーデンメモ NO3,038

「世界のガーデン」第六章:「露壇式庭園」とその代表作品

 

第20回:「露壇式庭園」の特性

 

今回からは、中世以降は世界を牽引してきたと言っても過言ではない、ヨーロッパの庭園について検証します。

ヨーロッパの庭園は3つの様式に分類することが出来ます。イタリアで生まれた「テラス式庭園 or 露壇式庭園」、フランスから広がった「平面幾何学式庭園」、イギリスを故郷とする「風景式庭園」。以上です。そして、この中で発祥が一番古いのが「テラス式 or 露壇式庭園」であるため、最初にこのタイプの庭園から分析を試みます。

前述したように「テラス式 or 露壇式庭園」はイタリアから生まれたもので「イタリア式庭園」とも呼ばれています。ただ、名称による混乱を避けるため今後は全て「露壇式庭園」と呼びます。そして、このタイプの庭園が誕生した背景として、1:「ペルシャ式庭園」の影響 2:ルネサンス時代の作家の美意識 3:イタリア及びその周辺の地形・・・の3要素を上げることが出来ます。

また前項(第19回)でも触れた通り、イタリアでは古代ローマ時代(BC753〜AD476年)にも庭園と呼ばれるものが存在しました。古いものでは紀元前後の遺跡もあります。おそらくその後もかなり優れた庭園が造り続けてきたと想定されますが、少なくとも一般人が目にすることが出来る明確な資料や、遺跡、再建された物件などはあまりなく、ここで取り上げようとしている「露壇式庭園」が登場するのは、ルネサンス時代から。従って14世紀以降の作品と言うことになります。つまり、古代ローマの滅亡後1,000年程後の事で、その直系の庭園ということではありません。

「露壇式庭園」は分類的には、幾何学式庭園に属し、前述のごとく「ペルシャ式庭園」の影響を強く受けています。ただし、乾燥地帯が大半を占める中東とイタリアでは環境・地形等が大きく異なり、またルネサンスという新しい文化・美意識も加わり、特有の優れた庭園を創出しました。同時に、以後のほぼ全ヨーロッパの庭園にも大きな影響を残しました。

技法としては、「ジャグディーノ・セグレト(隠れた庭)」「ベルベデーレ(景観)」「ボスコ(樹林)」「グロット(人工洞窟)」「噴水」「カスケード(階段状の滝)」「ビスタ(通景線)」「花壇や迷路(植栽)」「彫刻」などが重要視されました。これらの内容をつなげると「露壇式庭園」は、イタリアに多い丘など傾斜の多い地形を活かし、しかもテクニックを重視した庭であったことが分かります。また、超富裕層の別荘などにこのような庭園が多く作られたようで、権力の象徴・公共性と言った色彩が濃くなった後の庭園とは異なり、パーソナルなある意味自己満足的な楽しみ方が重要視された庭が多かったようです。

また、ルネサンスの巨人の一人ともいわれる「レオン・バツチスタ・アルベルティ」(1404〜1472年)は著名な庭園論を残しており、ここでも<環境の悪い都市を離れ、太陽と澄んだ空気に恵まれた郊外に別荘と庭園を造り過ごす>ことを推奨しています。彼のこのような庭園論は、以後に造られた「露壇式庭園」にも大きな影響を与えたことは想像に難くありません。

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「メディチ家」の庭園を描いた絵図(ジュストウテンス・1598年)

 

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「ジュネット・ユーテンス・オブ・ヴィラ・メディセア・ランブロギアーナ」の絵図(1598年)