みずきりょう の:エクステリア&ガーデンメモ NO3,043

「世界のガーデン」第七章:「平面幾何学式(フランス式)庭園」

 

第25回:「平面幾何学式庭園」の歴史と特性

 

前項ではヨーロッパ庭園の歩みについて述べました。今回からは「平面幾何学式(フランス式)庭園」について検証しますが、最初にどのようにして登場したか(歴史)・どのような特性を持っているのか・・・と言う2点について確認しておきます。

「平面幾何学式庭園」は「フランス式庭園」とも称されるように、フランスで誕生し全ヨーロッパへとその流行が広まりました。このような庭園が造られるようになったのは1,600年代の後半からで、年代的に見ても「露壇式(イタリア式)庭園」より後代の事です。つまり、「ペルシャ式庭園」やルネサンス時代に登場した「露壇式庭園」の影響を強く受けた庭園とも言えます。

ただし、フランスという地形・ルイ14世の影響が大きかったという2点が大きな変化を生み出しました。具体的には、ゆったりとした平野部で生まれた+極めて強い権力意識の支配者が生み出した・・・という事。結果、「ペルシャ式庭園」や「露壇式庭園」よりはるかに広大な庭園となりました。

「平面幾何学式庭園」発祥の最も大きな切っ掛けとなったのが「ベルサイユ宮殿」であったと言う事実も見逃すべきではありません。そう、「ベルサイユ宮殿」は広大な平野部に造られ、しかも圧倒的とも言える権力者(ルイ14世)が、他を制すると言う点も大きな目的の一つとして創出した建造物であったと言う事。従って、そこに併設された庭園も<世界の全て>と言ったイメージが盛り込まれました。もう少し分かりやすく言うと、主要部(宮殿等の建造物)から見た場合、<どこまでも庭園が続いており、他に何も見えない>と言った絶対的パワーが求められたという事です。結果、<広大+どこまでも見渡せる構成>が「平面幾何学式庭園」の最も大きな特性となりました。

「平面幾何学式庭園」の構成上の最大のポイントは、「ビスタ」と呼ばれる軸線を中心に広がって行くという点。つまり、中央部に庭園のメインとなる通路や水路が配置され、そこを中心に左右対称形の幾何学的なデザインンで広がって行くという事。こうすることで、巨大な空間を見通すことが出来、その圧倒的スケールが誇示されました。また、周辺部には巨大な樹木空間が設けられることが多く、塀や建物で囲わなくても<庭園外の景色が何も見えない>と言うのも大きな特徴と言えるでしょう。

1,600年代以前のフランスは様々な争いに巻き込まれ、住人(特に地方の有力者、等)は自ら土地や資産を守らなければならないという環境下にありました。従って、庭園も多数存在しましたが、殆どが建物に囲まれた中庭(プレオ)であり、それなりの高い価値を持ったものもあったようですが、少なくとも広く知られた現存する庭園は殆どありません。

対照的に、「平面幾何学式庭園」は圧倒的スケールと、著名な権力者(王や貴族)が建造したものが大多数で、歴史的な遺産・観光地として数多く残されています。だからこそ、現在のヨーロッパの庭園と言えば「平面幾何学式庭園」をイメージする人が圧倒的に多いというのが実情でしょう。

ブロワ城

 

 

 

 

ブロワ城(フランス・13~17世紀)・・・1,600年代以前のフランスでは庭園と言えば城などの建物内の中庭で、著名な現存物も少ない。

 

ヴィコント庭園

 

 

 

 

 

「ヴォー=ル=ヴェイコント城庭園」・・・典型的な「平面幾何学式庭園」

 

TOSHIBA Exif JPEG「ランブイエ城庭園」・・・広大さにまず目を奪われる