「世界のガーデン」第七章:「平面幾何学式(フランス式)庭園」
第45回:「ニンフェルブルク宮殿」と庭園
ドイツの庭園を紹介中。当コーナーでは第3弾として「ニンフェルブルク宮殿」とその庭園を取り上げます。
「ニンフェルブルク宮殿」はドイツ・バイエルン州の主要都市で、ビールの生産地としても有名な「ミュンヘン」にあります。建造者は当時のバイエルン地区統治者に選ばれた「フェルディナント・マリア」と彼の妻「ヘンリエッテ・アーデルハイト・フォン・ザヴォンイエン」。設計者はイタリアの建築家「アゴスティーノ・バレッリ」で、設計後約10年ほどの歳月をかけて、1,775年に中央の建物が完成しています。
さらに、「フェルディナント・マリア」を引き継いだ2代目の「マクシミリアン2世エマヌエル」が、1,701年から増築を開始し、この時に南北の建物が追加されています。さらに、3代目となるその息子の「カール7世」が庭園とそれを取り囲むバロック調の建物「騎士の家」を完成させ、ほぼ現在の姿となっています。ただその後も、部分的な増改装は何度か繰り返されています。
なお、1,730年頃と1,760年頃の細密画(画像参照)も残されており、さらに現在の航空写真も掲載しておきますので、興味ある人は比較してみてください。
「ニンフェルブルク宮殿」と庭園は一般公開されていますが、公共施設ではなく「ヴィッテルバッハ家」が所有。公開による収益で運営管理されていると言う事でしょう。
宮殿本体は、バロック様式の代表的存在で、前面の長さは700mに及びます。内部の最大空間は「石のホール」と通称される祝宴用の広間。天井高は3階分以上ありそこに絵が描かれたフレスコ画や装飾はとくに有名。また、改装によりロココ様式・新古典様式に模様替えされた部分もあります。特に、南側建物内の「小ダイニングルーム」はロココ様式空間として著名で、美人画が多数配され「美人画ギャラリー」とも呼ばれています。また、厩舎だった建物は博物館となっており、戴冠式に使用された馬車・陶磁器・陶磁器工房などがあります。
この他、別棟として庭園(敷地)内には、「パゴダの小城」「ハーデンブルク(バロック様式の建物)」「マグダレーナの庵」「アマリエンブルク(ロココ様式の狩猟小屋)」「アポロ神殿(新古典様式)」などがあります。
庭園は20ヘクタールと言う広大なもの。当初はイタリア式であったとされていますが、「ベルサイユ宮殿」の庭を造った「ル・ノートル」の弟子「ドミニク・ジラール」が拡張&大改造を行い広大な「平面幾何学式(フランス式)庭園」となります。ただ、19世紀初頭には「イギリス式庭園」へとさらに改装を行っています。従って、中央部で運河により2分されたこの大庭園、今では<複数の要素を持つ、ヨーロッパの歴史証人とも言える存在(航空写真参照)>と解釈すべきでしょう。
航空写真
宮殿裏側正面
庭園と宮殿正面
現在の庭園
細密画(1,730年)
細密画(1,760年)
「ルードリッヒ2世」の生まれた部屋
「祝宴広間」の天井に描かれたフレスコ画
ハーデンブルク(バロック様式の建物)
マグダレーナの庵
アマリエンブルク(ロココ様式の狩猟小屋)