• 「木」語り 連載第18回

    (スポットライト②)

    「エゾマツ」と「トドマツ」違いは???

     北海道には「エゾマツ」「アカエゾマツ」「トドマツ」「カラマツ」などのマツの名が付く針葉樹が多数自生しています。特に「エゾマツ」と「トドマツ」は北海道を代表する「針葉樹」として有名。ではその見分け方は? それぞれの分類・特徴は???

    *「エゾマツ」「トドマツ」の見分け方

     「エゾマツ」はなで肩。「トドマツ」はいかり肩。つまり「エゾマツ」は枝がナナメ下の方向に伸びます。一方「トドマツ」は同水平またはやや上を向いて伸びます。つまり、多少遠方からでも両者を見分ける事は簡単にできると言う次第。ただし、現実にこの話を聞き一般の方が両者を見分ける事はそれほど簡単ではありません。なぜなら木にはそれぞれの個性があり、偏屈者も混ざっているから。

     北海道へお出かけの場合、車窓などから「エゾマツ」「トドマツ」を見かける事が良くあります。そんな時には上記をヒントに<当てっこ>など・・・

    「エゾマツ」

    「トドマツ」

    *「エゾマツ」「トドマツ」のお勉強。

     せっかく「エゾマツ」「トドマツ」を取り上げたので、この際もう少し詳しくお勉強。

     「エゾマツ」はマツ科トウヒ属の常緑針葉高木。実は「アカエゾマツ」と「エゾマツ」の2種があり、一般的には両者纏めて「エゾマツ」と呼んでいます。ただ2種を区別すると言う意味で、「アカエゾマツ」「クロエゾマツ」(エゾマツ)と表現する事もあります。

     生息エリアは、千島列島・サハリン・中国北部・シベリア東部・カムチャッカ、それに北海道など。

     「トドマツ」はマツ科モミ属の常緑針葉高木。生息エリアは「エゾマツ」とほぼ同じで、千島列島・サハリン・シベリア・カムチャッカ、北海道のほぼ全域、など。

     従って、「エゾマツ」「トドマツ」は同属の樹木ではありません。当然、細かな部分ではかなりの相違があります。しかし、「エゾマツ」「トドマツ」は日本では北海道にしか自生していないため、両者ともに<北海道の木>に指定され、最近では植林も行われるなど大切に保護されています。

     北海道には多くの魅力があります。特に日本離れした雄大な自然は魅力的。従って憧れの観光地と言っても良いでしょう。そんな北海道、もし足を運ばれた時は「エゾマツ」「トドマツ」の事もお忘れなく。

    <補足事項>

     北海道大学の研究によると、近年の地球温暖化により北海道の「針葉樹」は危機にさらされているとの事。気温の上昇で、「広葉樹」の比率が増え、その分「針葉樹」の生息数が減少しているため。

    北海道大学の研究林・・・温暖化で次第に「広葉樹」比率がアップ

    レポート:新着情報: 北海道の針葉樹は衰退している!~約40年間のモニタリングから原生林生態系への気候変動影響を解明~(北方生物圏フィールド科学センター 教授 日浦 勉) (hokudai.ac.jp)

  • 「木」語り 連載第17回

    第三章:日本の森林事情

    10:自然林の分類・分布

    *カシ(樫)類を主体とした「照葉樹林」

     いわゆる山(傾斜地)に広くみられる「照葉樹林」で、カシ類の比率が高いのが特徴。従って常緑樹主体の樹木構成でもあります。

     ただ同じカシ類が中心の「照葉樹林」でも、低地エリアに分布する同系の「照葉樹林」と、高地エリアに分布する同系の「照葉樹林」とでは、主役がカシ類と言っても樹種に大きな違いがある為、低地性のカシ類を主体とした「照葉樹林」と、高地性のカシ類を主体とした「照葉樹林」に分けるのが一般的。

     具体的には、低地性の場合はイチイガシ・ツクバネガシ、高地性の場合はウラジロガシ・シラカシ・アカガシなどが主体となっています。

    イチイガシ

                   ウラジロガシ

    *シイ類を主体とした「照葉樹林」

     シイの仲間(すべて常緑樹)を中心とした「照葉樹林」はカシ類をベースとした樹林同様、殆どが山間部に広がっています。ただ、排水が良く地面が比較的乾燥したエリアに多く、湿潤地を好むカシ系の樹林と、この点が大きな相違となっています。

     この型の「照葉樹林」を構成する主な樹種は、ツブラジイ・スダジイ・アラカシなどですが、ツブラジイ主体の樹林は内陸の山間部、スダジイ主体の樹林は海岸及びその近辺に広がっています。

               ツブラジイ(金色の花が特徴)

                    スダジイ

     最後に、時間経過に伴う「照葉樹林」の変化について。

     前述のごとく現在の「照葉樹林」は、その元となる人工林が放置され、殆どが自然帰りのような形で再生した半自然林。そして、大半が以下のような経過を辿ります。

     空き地や松林~落葉樹の進出~常緑樹の進出~常緑樹主体の「照葉樹林」へと変化。従って、放置された空き地・林はいずれ「照葉樹林」となり、豊かな自然を取り戻していくと言う次第。ただし、この変化の間に竹類が入り込むと、やがて竹林だけが残ると言った課題も出てきています。なお、竹類は温暖な気候を好むものが多く、竹林の増加は温暖化問題と密接に繋がっている事も補足しておきます。

     私たちは増えすぎたスギ・ヒノキの人工林の管理だけではなく、どのようにそれを「照葉樹林」や「落葉樹林」に戻し、どう再生させるかと言う大きな課題に対しても長期展望に立ち取り組んで行く必要があります。

               水辺に広がる「照葉樹林」

  • 「木」語り 連載第16回

    第三章:日本の森林事情

    10:自然林の分類・分布

    <日本の「照葉樹林」>

     「照葉樹林」は日本で最も広いエリアに広がり、かつ多くみられる樹林。それだけに多様性に富み、複数の形態があります。しかも分類方法が統一されている訳ではありません。従ってこのコーナーでは、代表的な「照葉樹林」の紹介と、それぞれの特性を簡単に提示しておきます。

     ただ、かつては日本列島の代表的樹林帯であった「照葉樹林」は、江戸時代以降、大半がスギ・ヒノキを中心とする人工林=林に変えられ、巨大な面積を有する「照葉樹林」は殆ど存在しなくなりました。従って現存するものは、神社仏閣に関係する森林、里山や海岸の松林などの一部が自然に戻ったものが大半。結果、半自然林が殆どを占めています。

     また、「照葉樹林」は常緑樹が主体ですが、「針葉樹(主にマツ)」「落葉樹」との混成林も多く、時間の経過とともにその比率も変化するのが一般的(後述)。

    *低地に多い巨大樹が目立つ「照葉樹林」

    <タブノキ型「照葉樹林」>などと呼ばれる事もあります。その名の通りタブノキ・クスノキ(両方とも同系の常緑高木)が多いため、巨樹を中心に広がる「照葉樹林」となります。川が作った肥沃な沖積平野などに良く見られるのが特徴。

    タブノキ

    クスノキ

    *海岸等に広がる低・中木中心の「照葉樹林帯」

     (寒冷エリアを除く)本州・四国・九州の海岸及び海岸に近いエリアに多く見られる「照葉樹林」。ウバメガシ・トベラ・シャリンバイ・マサキなどの常緑樹が主体。しかも低木の比率が高いのが特徴と言えるでしょう。

     当然の事ながら、塩害や強烈な日差しにも強い木が多く、トベラ・シャリンバイなどは街路用の低木としても多用されています。

    シャリンバイ

    トベラ