第三章 日本の森林事情
9:日本の森林 ②
B:<山≒森林>と言ったイメージが強い
日本人であれば多くの人が森林と言えば山をイメージするのではないでしょうか。従って、自然に生息している樹木の大半が傾斜地に生えていると。おそらく子供たちに森林を描かせてみても、同様の作品となるでしょう。
でも世界では少数派。大半の森林が平地かなだらかな丘陵地であるからです。
では<山≒森林>と言う特有の事情は日本の森林にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。答えは明確で、森林の開発・都市化を遅らせる結果となりました。たとえ山の開発を進めても、人工林=林に変える事が大多数を占め、自然林~人工林への移行はあっても、森林自体の消滅はごくわずかであったと言う事。
産業開発・都市化と言った視点で観るとそれは大きなマイナス要因であったかも知れません。しかし、地球温暖化問題にあえぐ現代においては、それが他に代えがたい財産となった事は周知の通り。
では、林業・木材業と言う視点では。この件に関する見解は複雑だと言わざるを得ません。
<山≒森林>のメリットとしては、農業を含む他産業の進出を遅らせ、里山と言う日本特有の開発形態・文化を生み出しました。それは同時に林業の敗退を防止する要因ともなったからです。他産業と比べるとひ弱と言わざるを得ない林業は、もし日本の森林の大半が平地であったならば、今以上にその存在を脅かされるようになっていたでしょう。最も、一部では林業の企業化・大型化が進み、成功者が現れた可能性もありますが・・・
いずれにせよ、森林面積ははるかに小さなものとなっていたでしょう。
<山≒森林>のデメリットに関しては、森林面積の維持には貢献したものの、森林(主に林)管理・維持費のコストアップ、労働の過酷化などに繋がっていると言う点。
コスト高に伴い外国勢の進出許し、同時に林業と言う産業の弱体化の主要因となっていると言う事実を見逃すことは出来ません。
ただいずれにせよ、あらゆるものにはメリットとデメリットがあります。<山≒森林>と言う特有の事情も同じです。従って、私たちはもっと知恵を出し合って、産業面での林業・国産木材を使った木材関連産業の育成に取り組む必要があります。なぜなら、膨大な人工林が不健康な状態に至り、結局は面積だけは自慢できても、瀕死の森が増えてしまう事になるからです。ただ、この件に関する検証は後項に譲る事にします。

吉野の山(奈良県吉野郡吉野町)・・・吉野の山は桜の名所であると同時に、日本を代表する木材産地でもある。いずれにせよ、日本の森林は大部分がこのような山岳地帯にある。