「木」語り 連載第16回

第三章:日本の森林事情

10:自然林の分類・分布

<日本の「照葉樹林」>

 「照葉樹林」は日本で最も広いエリアに広がり、かつ多くみられる樹林。それだけに多様性に富み、複数の形態があります。しかも分類方法が統一されている訳ではありません。従ってこのコーナーでは、代表的な「照葉樹林」の紹介と、それぞれの特性を簡単に提示しておきます。

 ただ、かつては日本列島の代表的樹林帯であった「照葉樹林」は、江戸時代以降、大半がスギ・ヒノキを中心とする人工林=林に変えられ、巨大な面積を有する「照葉樹林」は殆ど存在しなくなりました。従って現存するものは、神社仏閣に関係する森林、里山や海岸の松林などの一部が自然に戻ったものが大半。結果、半自然林が殆どを占めています。

 また、「照葉樹林」は常緑樹が主体ですが、「針葉樹(主にマツ)」「落葉樹」との混成林も多く、時間の経過とともにその比率も変化するのが一般的(後述)。

*低地に多い巨大樹が目立つ「照葉樹林」

<タブノキ型「照葉樹林」>などと呼ばれる事もあります。その名の通りタブノキ・クスノキ(両方とも同系の常緑高木)が多いため、巨樹を中心に広がる「照葉樹林」となります。川が作った肥沃な沖積平野などに良く見られるのが特徴。

タブノキ

クスノキ

*海岸等に広がる低・中木中心の「照葉樹林帯」

 (寒冷エリアを除く)本州・四国・九州の海岸及び海岸に近いエリアに多く見られる「照葉樹林」。ウバメガシ・トベラ・シャリンバイ・マサキなどの常緑樹が主体。しかも低木の比率が高いのが特徴と言えるでしょう。

 当然の事ながら、塩害や強烈な日差しにも強い木が多く、トベラ・シャリンバイなどは街路用の低木としても多用されています。

シャリンバイ

トベラ