• 「木」語り  連載第12回

    第三章 日本の森林事情

    9:日本の森林

     日本は世界第二位の森林大国(森林の比率が高い)である事が分かりました。でも日本の森林は実際にはどのような規模で、どのような特性を持っているのでしょうか。確認して行きます。ただここでは自然をベースとしたものを主体として、社会的要因に関しては項を改めて詳しく検証する事にします。

     まずは日本の森林の大きさ(全面積)から。

     日本の総面積をご存じでしょうか。そう、約3,710万ha。そのうち約68%が森林と言う事で、日本にはおおよそ2,520万haの森林が存在すると言う事。しかも、(内容はともかく)面積自体は殆ど減少していません。最も2,520万haがどれほどのものか想像するのは難しいでしょうが・・・

     と言う事で、広大な国土と森林を持つカナダと比較してみましょう。

     カナダの国土(総面積)は約10億ha。何と日本の約27倍の広さがあります。勿論世界の森林事情のコーナーでも触れた通り屈指の森林国です。では実際の森林面積は。森林比率33.6%で、約3.4億haと言う事になります。となれば日本の森林規模はカナダの約7.5%。

     ナ~ンダやっぱり日本の森林なんてチッポケ。そう思われるでしょうか? 筆者は逆です。あの広大なカナダと森と比較しても、わずかな国土しかない日本の森はカナダの7.5%もの規模に達する。そんな印象を受けます。

     その他の特色としては、A:樹種が多く多様性に富んでいる B:<山≒森林>と言ったイメージが強い・・・この2点を上げることが出来るでしょう。

    A:樹種が多く多様性に富んでいる。

     あるデータによると、日本にはおおよそ210億本の木があり、約1,200種の樹木が自生しているとの事。世界には約8,000種が存在するとされており、そのうちの15%が日本にあると言う事になります。ただこの数値は、いくら日本の森が多様性に富んでいるとはいえ、疑問を持たざるを得ません。おそらく、1,200種の中には相当数の外来種が含まれているのでしょう。

     ただいずれにせよ、日本の森林は諸外国と比較しても非常に樹種が多い事は間違いありません。その最大の理由は、日本列島は細長く、亜寒帯(あるいはそれに近い)~亜熱帯(あるいはそれに近い)までの気候が併存しているからです。

     上記は平面上の分布特性ですが、日本の<森≒山(後述)>と言ったイメージが強く、高度による樹種変化も各所で見られ、屋久島などでは亜熱帯性の樹木~冷涼地域の樹木までが併存しています。

     もう少し日本国内の森林事情を見ると、林野庁等の資料では、約2,252万haの森林中、おおよそ55%(約1,250万ha)が針葉樹林・45%約(1,250万ha)が広葉樹林で、若干針葉樹林の生息面積の方が広いようです。ただし正確な数値は不明ですが、針葉樹と広葉樹の混成林も一部存在します。

     補足するなら、日本は(当然の事ながら)人工林=林の比率が高く、約1,000万ha・全森林面積の約45%に相当します。そして人工林=林のほぼ全てが針葉樹林。従って、自然の森林=森に限定すると約80%が広葉樹林・約20%針葉樹林となっています。

     また森林全体では針葉樹林の方が前述のごとく若干広いわけですが、そのうちの80%が林で、針葉樹林の中で森と表現できる部分はわずか約11%と言う事になります。

    「白神山地」(秋田県~青森県、世界遺産)・・・「ブナ」を主力とした落葉広葉樹林が広がっている。

  • 「木語り」 連載第11回

    第三章:日本の森林事情

     世界の森林事情を探ってきました。続いて私達の国日本の森林事情について確認。誰もが知る通り、日本は山国。だから森林が非常に多い国です。でもそこには大きな可能性も問題も。だから私達はその実情をもっと知り、もっと責任ある対応を取る必要があります。

     なお、森・林と言う言葉ですが、ここからは公的資料を多用するため、日本の官公庁の規定に従います。具体的には<人工林=林、自然林=森>と定義されており、それに準じます。

    8:森林が多いと言われる国々

     日本は間違いなく森林大国です。でも世界の国々と比較しどの程度の位置にあるのでしょうか? 色々な比較方法がありますが、ここでは国の広さ等は無視し、単純に森林比率の高い国順にベスト20を列記しておきます。

    <全国土に対する森林比率の高い国ベスト20

    1位・・・フィンランド    73.9%

    2位・・・日本        68.2

    3位・・・スウェーデン    66.9%

    4位・・・韓国                63.5%

    5位・・・ロシア       47.9%                                                                               

    6位・・・オーストリア    46.7%

    7位・・・ポルトガル     41.3%

    8位・・・スロバキア     40.1%

    9位・・・スペイン      35.9%

    10位・・・チェコ             34.3%

    11位・・・イタリア      33.9%

    12位・・・メキシコ      33.7%

    13位・・・カナダ       33.6%

    14位・・・アメリカ      33.1%

    15位・・・ドイツ             31.7%

    16位・・・ニュージーランド   31.0%

    17位・・・スイス             30.9%

    18位・・・ノルウェー         30.7%

    19位・・・ポーランド     30.0%

    20位・・・ギリシャ      29.1%

     この数字を見てあなたはどのような印象を受けられたでしょうか・・・

     ひょっとすると、ロシア・カナダなどは意外と感じられたかも知れません。森林だらけ。そんな印象を持つ人が多いと思いますが、いずれも50%を割り込んでいるから。勿論国土が広いと言うのも一つの要因でしょうが、酷寒の寒帯エリアでは木が育たないからです。

     いずれにせよ国土の50%以上が木(樹木)で覆われている国は、世界中探してもたった4国しかないと言う事。加えて日本は1位のフィンランドに続き、2位であると言う事。この実情を見ても、私達はこの緑の国土を、もっともっと誇りに思うべきでは無いでしょうか。同時に、もっともっと責任を持って緑の保全に取り組むべきでは無いでしょうか。

    「フィンランド」南東部・・・「フィンランド」は世界で一番森林比率の高い国。国土の70%以上が針葉樹林。

  • 「木」語り 連載第10回

    (スポットライト①) 世界の注目を集める「コスタリカ」

     「コスタリカ共和国」は中米と言う政治的に極めて難しい舵取りが求められ地域にあり、現在もコカインの一大消費地になっているなど、様々な悩みを抱えています。またアメリカ合衆国との関連が深まるのと共に、コーヒープランテーションなどの影響で「熱帯雨林」などの自然破壊も進行して行きました。

    元々自然豊かな国で、国土の95%が森で覆われ、地球上の全生物の5%が生息していると言われていたほど。しかし自然破壊が進行し一時は森林面積が同40%にまで低下しました。つまり短期間のうちに自国の森の半分以上が消失してしまったと言う次第。

    「コスタリカ」は総面積約510万ha(世界第125位)・人口約500万人の小国で、豊かと思われた自然も破壊が始まるとあっという間に最悪の状況に至ってしまったと言う事でしょう。

    しかし元々民度の極めて高い国家と言われており、周辺国に先駆け「熱帯雨林」の保全に動き出します。森との共存を図ったプランテーションへの切り替え。自分の所有地をあえて熱帯雨林に戻してしまうと言う試み。等々。

    結果は、自然豊かな国に少し戻ったがより貧しく・・・ではなく、逆に所得アップする人たちが増え、経済的にもプラス効果を生み出しました。豊かな自然が魅力となり<世界有数のエコツアーの国>として知られるようになり、観光収入が大幅に増えたからです。勿論それと並行して心の豊かさも!

    特に有名な自然産物が、熱帯に住む煌びやかな鳥たち。中でも世界一美しいと形容される「ケツァール」は、一時期その姿を殆ど見る事が出来なくなっていましたが、自然保護が進むとともに生息数が回復し、エコツアー最大の目玉となっています。

     勿論道半ばであり、また短期的にはコロナの影響も受けました。しかし、この悩み多き小国の勇敢なチャレンジは、「熱帯雨林」問題に一石を投じてくれたことは間違いの無い事実。頑張れ「コスタリカ」! そして我々も今できる事を!

    世界一美しい鳥?「ケツァール」

    「ラ・アミスター国立公園」内の「リオ・サベグレ川」