「りょうさんの:ほぼ毎日、エクステリア&ガーデンメモ」・・・NO2,121
「日本庭園と日本外構 編」・・・江戸時代の作庭書「夢窓流治庭」⑨!
「夢窓流治庭」・・・中谷ゼミ&飛田範夫(ひだのりお)作品をベース資料とする
第八章 茶道に関連する庭の記述
1:数寄屋の躙(ニジリ)り口について
数寄屋躙り口はその柱石より敷居までの高さを50㎝程度(1.5〜1.6尺)とする。躙り口の踏石の高さは土より14㎝(4.5寸)程度、蹴込の板より前の空きスペース11㎝(3.5寸)程度とする。
補足事項:躙り口(ニジリグチ)=茶室に入る小さな入口。高さ65㎝×幅60㎝程度
2:刀掛関連の事
刀掛の踏石は、躙り口の踏石より3㎝(1寸)程度低くする(つまり、高さ11㎝程度)とする。
補足事項:刀掛=刀掛には2つの意味がある。①:刀を置く台 ②:茶室に続く小部屋(武士はここに刀を置き、茶室に入ったためこの名が付いたのであろう)。ここでは当然②を指す。
3:蹲踞(ツクバイ)と手水鉢(チョウズバチ)について
蹲踞の手水鉢は、水袋(シンクの事)と前石の間を55㎝〜63㎝(1.8〜2寸)程度空けて設置する。ただし、石の大小によって微調整する事。前石の高さは地面から9㎝強(3寸)程度がよい。
補足事項:蹲踞=茶室に入る前に手を洗うために設置された石群。手水鉢を中心に、前石(手水鉢を使うために乗る石)、手燭石(灯りを置く石)、湯桶石(手を洗うために水を汲む湯桶を置く石)などで構成される。そして、本体の手水鉢以外の石を投石と呼ぶ。
4:手水鉢について
手水鉢は前石より18㎝強(6寸)高くして設置する。蹲踞はメインの手水鉢をベースに3つの石(前石、手燭石、湯桶石)で構成されるのが基本。ただし、椽先手水鉢(椽先手水鉢=手水鉢とそれに関連する石=蹲踞を表していると想定される)は必ず3石とは限らない。
5:片口石(湯桶石の事か?)について
片口石は前石より4〜5㎝(1.5寸)高く設置しても良い。ただし、微調整は左右の石を見ながら行う事。
6:手燭石について
手燭石は前石より9〜10㎝(3寸)高く設置しても良い。ただし、微調整は左右の石を見ながら行う事。
補足事項:3〜6項は茶道書宝永七年(1710)『貞要集』のパクリと考えられる「一 手水鉢の事、内腰懸より躙上りの間に見合居る、臺石を載せ居るなり、地より二尺四五寸迄、前石は景よく大成石を居る、前石の上面より手水鉢の上端迄、一尺より一尺五六寸迄、又前石の前面より手水鉢水溜の口迄、一尺八寸、一尺六七寸迄、柄杓を置見申、遣能程に居申事第一也、水門は両脇景能石を居、松葉をしき、流上に水はぢきの小石、又は小瓦杯置申候、道安流の水門仕様有之候、口伝。一 湯桶石、手水鉢我右の方水門へ掛て居ル。其前に相手の石とて居ル也、是は高貴の相伴のもの、御手水懸申時の為に居る石也。又手水鉢中潜軒下、躙上り軒下に居る、雨降候時の為とて、近代軒下に手水鉢居ル事也。一 手水鉢水溜を掘申寸法は、横六寸八分、竪は一尺一寸、深サ七寸二分、飯櫃に丸ク堀申候、是は大きなる鉢の寸法也、小キ鉢には七八寸九寸丸ク堀り、深サ六七寸程に堀申候、尤見合第一、また丸鉢には水溜角に堀申事も有。」、寛政11年(1799)越一楓『夢窓流治庭』に「蹲踞手水鉢は水袋と前石の間一尺八寸より二尺位明け置よし、尤も石の大小によるべし、前石高さ土より三寸位。手水鉢は前石より六寸計高く居てよし、蹲踞手水鉢は三ツ石也、椽先手水鉢は三石に限らず。片口石は前石より一寸五分高く居へてよし、左右の石の見合也。手燭石は前石より三寸程高く居へてよし、但し左右恰好見合也」
7:飛石について
飛石の高さは地面より4.5〜6.5㎝(1.5寸〜2寸)が良い。ただし、天子など高貴な人が乗る(歩く)場合は15㎝強(5寸)、諸侯が乗る場合は10㎝弱(3寸)、大夫が乗る場合は6㎝強(2寸)、庶民が乗る場合は3㎝強(1寸)とする。これが、飛石の重要ポイントである(この部分には納得がいかない。天子や諸侯が踏み外して怪我すればどうするのか?)。ただし、高さ1〜2寸までは一般常識で、3寸以上の項目(天子・諸侯)は極秘事項だ。公開無用。
8:飛び石について②
飛石と飛石の隙間はおおよそ9㎝強(3寸)とする。ただし、9㎝強より狭いのはOK、広いのは×。それが飛石の間隔に関する重要ポイントである。また、高さ3寸以上の飛び石や蹲踞の役石に関する記述は、山水(庭)プランの極めて重要な部分で、これまた極秘事項である。
補足事項:3〜8項については、パクリと思われる部分、納得がいかない部分を含め、秘伝(極秘事項)的な扱いを行っている。筆者はここに「夢窓流治庭」に対する疑念を禁じ得ない。なお、前出の「貞要集」は1710年の作、「夢窓流治庭」は1799年の作とされている。従って、パクリの立場が逆転することはあり得ない。
そこで本日の一口アドバイス。
「パクリも秘訣・秘伝として伝える? そこに浅はかさが見え隠れ・・・」
(りょう)