「りょうさんの：ほぼ毎日、エクステリア＆ガーデンメモ」・・・NO2,207

「日本庭園と日本外構　編」・・・ツツジの名所「相楽園」の真実？

明治の庭園。最後に神戸市のツツジの名所としても親しまれている「相楽園」を取り上げます。

「相楽園」は神戸市中央区中山手通5－3－1にある庭園で、現在は神戸市所有の都市公園となっています。歴史を辿ると、旧三田藩士・小寺泰次郎が実業家として成功を収め、1885〜1911年までの歳月をかけ完成させた私邸がその元。当時は「蘇鉄園」と呼ばれていましたが、1941年に神戸市が譲り受け、現在のような都市公園となり、この時に「相楽園」と言う名称に変え以後一般公開されています。なお、小寺泰次郎の長男は、衆議院議員・11代神戸市長などを歴任した政治家・小寺健吉（1877〜1949年）。

「相楽園」はほぼ正方形で20,000㎡弱の敷地を持つ建造物。南東方向に正面入り口があり、園路を挟み南に池泉回遊式の日本庭園と芝生広場、北方向に広場、旧小寺家厩舎、旧ハッサム住宅、正面入り口との対面（北西）端に相楽会館などが配されています（案内図参照）。また日本庭園内の池周辺には茶室・浣心亭と舟屋形が設置されています。

庭園の全体構成は、池を中心とした池泉回遊式の日本庭園。しかし、「相楽園」内には洋風の建造物もあり、広場的な洋風（あるいは和洋折衷）空間もあり、和と西洋の文化が混ざり合った明治・大正期の特性を兼ね備えています。現在の庭は、神戸大空襲で焼失し再建されたもの。ただし、大楠・蘇鉄林・大燈篭・塀・門・巨大な石組等は明治期のもので、当時の雄大さの面影を残しています。

なお、各種建造物の概要は以下の通り。舟屋形＝1682〜1702年の建造、戦後垂水区から移設、重要文化財。旧小野寺家厩舎＝1908年建造、重要文化財。旧ハッサム住宅＝1902年に神戸市生田区北野町から移設、重要文化財。相楽会館＝戦後に神戸市が迎賓館・催し会場として建設。茶室・浣心亭＝相楽会館と同時期に設置。

そこで本日の一口アドバイス。

「個人邸宅～都市公園へ。明治～昭和の歴史を伝える相楽園！」

（りょう）

正門

案内図

日本庭園の鳥瞰写真（相楽会館より撮影）

池と浣心亭

船屋形

池と石橋

豪壮な石組

遺水（水路）

旧小寺厩舎

旧ハッサム住宅

相楽会館

「りょうさんの：ほぼ毎日、エクステリア＆ガーデンメモ」・・・NO2,206

「日本庭園と日本外構　編」・・・三木市の「小河家住宅」とその庭園？

明治の庭園を紹介中です。この項では、兵庫県三木市本町3に現存する「小河家住宅」とその庭園を取り上げます。

「小河家住宅」小河秀太郎が造った邸宅で、明治後期建造物と伝えられています。また、当時の建築・庭園様式を伝える貴重な文化財として、国登録文化財にも指定されています。

施主の小河秀太郎は（1847〜1920年）は米穀商・小河太吉の次男として生まれ、石州（島根県）浜田藩士・戸川家の養子となりましたが、廃藩置県により実家へ帰り、明石の豪商・米沢長兵衛の指導等により実業家として頭角を現します。そして、酒造業でも成功するなどの実績を残し、三木銀行の創立にも貢献。さらに、県会議員・三木町長など政治家としても活躍した三木の名士。

「小河家住宅」は彼の別邸として建てられたもので、正式な完成日時は不明ですが、明治時代の建物・庭園の特性を良く残す貴重な資料として、高い評価を得ています。その敷地は南北に細く弓型に曲がり、北面が道路・南面が路地に面しています。そして、北側から表門、池を中心とした池泉回遊式の主庭、主屋と中庭、小庭、裏門と続き、全体が塀・建物で囲われています。この全体構成を見ても、建物だけではなく、屋外空間（庭）に大きなウエイトを掛けた、遊び心を重要視した建造物であったことは明確。小河秀太郎の芸術家的資質がそうさせたのでしょうか？、それとも別邸と言う条件によるものでしょうか？・・・

ただ、明治後期の建造物であることは間違いありませんが、その歴史、建築家、作庭家、技法、等の資料に乏しいのが残念です。

そこで本日の一口アドバイス。

「三木の名士が造った豪邸。遊び心を重視し庭園にもこだわりが・・・」

（りょう）

表門周辺

平面図

表門

表門から主庭へのアプローチ

主庭から主屋を望む

主屋の北側にある主庭

燈篭付近の石組

反石橋

露地風の中庭

「りょうさんの：ほぼ毎日、エクステリア＆ガーデンメモ」・・・NO2,205

「日本庭園と日本外構　編」・・・生協が救った名園「南昌荘」とは？

明治期に造られた庭園。この項では「南昌荘」を取り上げます。

「南昌荘」は岩手県盛岡市清水町13－14にある建造物・庭園で、現在は「いわて生活協同組合」が所有し、一般開放しており、鑑賞目的だけではなく、会合・食事の場等としても活用されています。

「南昌荘」の歴史を辿ると、明治に活躍した実業家・瀬川安五郎（両替屋惣介6代目。秋田県荒川鉱山の払い下げを受け鉱山王とも呼ばれていた）が明治中期に建造。しかし、その後事業に行き詰まり、1908年（明治40年）に当時の盛岡市長・大矢馬太郎に売却しました。そして、大矢馬の所有中には後の宰相・原敬が欧米視察前に「南昌荘」で1ヶ月程過ごしたと言う記録もあります。

「南昌荘」は、個人所有の建造物であるため、その後も持ち主が変わり、赤沢家が最後の所有者となります。しかし、その赤沢家も苦境に立たされ、1982年（昭和62年）手放します。そして、大手マンション業者に買収され崩壊の危機を迎えます。これを救ったのが盛岡市民生協（現「いわて生活協同組合」の前身）で、文化財保存を目的として、組合員の共有財産・共有所有物として購入。そして、「南昌荘」は現在のように、生活文化会館的な運営が行われるようになり、同時に文化財としても保護される事になりました。

「南昌荘」は和風の木造建築物と、庭園から成り立つ建造物。庭園は池泉観賞式or池泉回遊式的な構成となっています。建物・庭共に明治の特性を良く留める貴重な存在ですが、残念ながら一般的資料でその詳細を示すものは殆どありません。従って、現存する建物・庭を実際に見るか、写真により内容を確認する以外に、記録事項が極めて少ない事が残念です。ただ、庶民の身近な存在として生き続けている点に関しては、生協の決断に大いに感謝すべきでしょう。

そこで本日の一口アドバイス。

「明治の生活・文化を伝える南昌園。保存に貢献した生協に感謝・・・」

（りょう）

「南昌荘」の間取り図

玄関付近

庭から見た建物

屋内からの景観

庭園（池と石橋）

太鼓橋とその周辺