りょうさんの:エクステリア&ガーデンメモ

 

「りょうさんの:ほぼ毎日、エクステリア&ガーデンメモ」・・・NO1,956

 

「日本庭園と日本外構 編」・・・作庭記詳述:「泉の事④」「楼閣の事」!

今回で「作庭記」の現代語詳述は最後です。そして、最終項の1つ前は前項に続く「泉の事④」、最終稿は「楼閣の事」となり、全37項の終了となります。

「作庭記36項:泉の事④」・・・清潔に水を運ぶ。

汲み上げた水は、1~2夜で腐って臭くなる。虫もわく。だから、絶えず水を取り替えて、(泉)の底の石も土もよく洗って、必要な時にその都度水を入れるようにするとよい。地上に高く筒を立てる時も、板を底の部分に入れておいた方が良い。また、底の部分に粘土を塗ると言う方式は以前に述べたとおりだ。さらに、板の外回りも掘り込んで粘土を塗っておく方が良い。

簀の子を敷く時は、筒状の立板よりもよりも先を少し出して敷いた方が良いと言う説もある。この他泉を広くして、立板よりも60~90㎝、水のたまる部分(泉の縁)が外側に来るようにすると言う説もある。これは、泉に水を流し入れる時に、簀の子の下の水が透けて見えて、ちょっと恐ろしいような感じにすることを好んだためである。ただし、絶対的な決まりではなく、その時の状況に応じ工夫すればよい。

泉を作る時、住居より高い位置に井戸がある場合は、その井戸の水面部分から蓋のある樋のような形の水路作り、そこを通して住居の泉に導けば、流れ出る水が絶えると言う事がなくなる。

「作庭記37項:楼閣の事」・・・楼と閣の違い。

唐人の家には必ず楼閣がある。高楼は別だが、一般的には軒の短いものを楼と名付け、軒の長いものを閣と名付ける。楼は月を見るのに都合が良いように作ったもの。閣は夏の日差しを遮り涼しくするためのもの。そして軒の長い屋根は、夏は涼しく、冬は暖かくすると言う特色を持っている。

以上37項で「作庭記」記述は終わりです。ただし、単に「作庭記」と言っても平安時代の著述と推定される極めて古い書物です。従って、原本が残っているわけではなく、様々な写本が現代に伝わっていると言う次第。

具体的には、最も古い「作庭記」の伝書は金沢市の谷村家が所蔵するものとのことです。また、安土桃山時代までの作庭書は殆どが秘伝書であったようです。そして、江戸時代になりようやく一般に多くの作庭書が出回るようになりました。江戸時代以前の古い伝書は「作庭記」「秘本庭造伝」「山水並野形図」「嵯峨流古法秘伝書」の4種があったとのこと。機会があれば、「作庭記」以外の作庭書についてもどのような内容であったか、明らかにしていきたいと思います。

いずれにしても「作庭記」は、庭園作りのバイブル的書として、一貫して高い評価を受け、大切に伝えられてきました。だからこそ、広く知られ私たちはその内容に触れることが出来ます。

今回は、「大阪市立大学・中谷セミナー」のネット公開資料をベースとしました。ただ、読み下し文、現代語訳共にかなり難解です。従って、筆者が単に更に分かりやすく訳しなおすと言う事だけでは無く、「誰でも分かる」をテーマに、思いきいた意訳・場合によっては意味は同じだが、部分修正に近い表示を試みました。だからこそ、作庭記現代語訳ではなく「作庭記詳述」と言うタイトルにしました。以上を前提として「作庭記」には何が書かれ、どのような素晴らしさを持つのか、少しでも理解していただければ幸いです。

そこで本日の一口アドバイス。

「庭作りのバイブル・作庭記! その魅力をもっと知ろう!」

(りょう)

                                   『作庭記』(さくていき)

図版:毛起寺 著者:不明 成立年代:不明 写:1289

大阪市立大学・中谷セミナー用「作庭記資料」の冒頭部分