「りょうさんの:ほぼ毎日、エクステリア&ガーデンメモ」・・・NO2,027
「日本庭園と日本外構 編」・・・作庭書「山水並野形図」①!
「嵯峨流古法秘伝書」に続き、この項からは「山水並野形図」の全文を紹介します。「作庭記」「嵯峨流古法秘伝書」同様、大阪市立大学の大谷・庭ゼミの公開資料をベースとしますが、「山水並野形図」のみ元文に近い読み下し分がありません。現代語訳のみと言う事で、解釈困難な訳・不明点も多数残されています。また、絵図があった可能性もありますが、同資料では存在しません。
以上のような事情で、分かりやすく提示することが困難な要因が多数あります。しかし、当「日本庭園と日本外構」は学術書ではありません。読者も一般不特定多数の方々を想定しています。従って、原文から多少脱線するかもしれませんが、筆者が想像力を働かせ、大胆に内容を類推し、分かりやすく提示します。この点ご了承ください。また、「山水並野形図」は「作庭記」同様、平安時代の書物とされています。しかし、現存する資料(写本等)は、1466年以降で、江戸時代のものが中心。従って、本項でも鎌倉時代~戦国時代の書として取り上げます。
「山水並野形図」①・・・「庭の全体構成」「相克と相性とランク」
1:庭の全体構成
東方朔(方士、中国の妖術師のような人物)の家の図(絵)を見て、少し確認しておきたいことがある。まず、庭には、原、山、峰、滝、河などがあり、このようなものを作るには、石と木(植栽)をベースとすべきである。だから、まず特色ある石がいる。そして特色ある石とは、多様な表情(五色の相克)と、他の物とのバランス(相性)が取りやすい石の事だ。
庭(山水)は山と丘陵(野筋)から基本的に成り立っている。だから、左右に2つの山を築くと良い。陽と陰の山と言う事で、陽の山は高くして、陰の山は少し低くする。そして、庭の最高の位置に陽の山を作ること。しかし、水を使った方が良いので、全体はゆるやかなアンジレーションの構成であっても、部分的に土地を削って、滝を作るとさらによくなる。山、水、石は例えて言うなら、支えあう3本の足のようなもので、1つが欠けてもバランスよく存在することが出来ない。
2:相克と相性とランク
石の様々な表情をよく見て、最高の関係(能々相克)と、周囲とのバランス(相性)をよく考え設置する事。悪い相克と言うのは、例えば、木と土が互いに打ち勝とうとして反発状況を作り出す、土と水、水と火、火と金属(金)、金属と木も同じことが言える。この点を熟知する事。
施主に例えるなら、木の性格を持つ施主の場合は青色で象徴され、正面に黄色い石を設置してはいけない。木と土の性格(克)ゆえのことだ。土の性格を持つ施主の場合は、黄色で象徴される。だから、黒い石を常に見える所に設置してはいけない。土と水の性格ゆえのことだ。このような場合、青い石を嫌ってもいけない。水の性格を持つ施主の色は黒だ。だから、赤い石を常に見える所に設置してはいけない。水と火の性格ゆえのことだ。火の性格を持つ施主の色は赤で象徴される。だから、常に見える所に白い石を設置してはいけない。火と金属の性格ゆえのことだ。金属の性格を持つ施主の場合は白色で象徴される。だから、常に見える場所に青い石を設置してはいけない。金属と木の性格ゆえの事だ。青い石を設置すれば、相性が悪くお互いを離反することになるからだ。
良い相性と言うのは、木は火を生み出し、火は土を生み出し、土は金属を生み出し、金属は水を生み出し、水は木を生み出すと言う事だ。だから、木の性格を持っている人には赤い石を立てる。これが基本的組み合わせだが、5色のうち赤は禁断の色でもある。だから注意すべきだ(注:だから木性の人には何色の石が良いとは書いていない)。だから、火の性格を持った人には黄色い石を常に見える所に設置すべきである。だから、土の性格を持った人には、常に見える所に白い石を設置すべきである。だから、金属の性格を持った人には黒い石を設置すると吉。だから、水の性格を持った人には、常に見える所に青い石を設置すべきだ。これが相性と言うものだ。
注:各物質を象徴する色。木=青、火=赤、土=黄、金属=白、水=黒
また、-α(相加)と言うものがある。赤い石を南側に設置し、これに向かって南側に天竺(植物では天竺牡丹=ダリア、天竺豆=ソラマメなどがあるが、共に対象外で、意味不明)を植えると言う事は、火の性格を4回も(おそらく、赤い石、南側・朱雀=赤・2回、赤い植物、合計4回)繰り返すことになり、パワーが強すぎて火難に襲われる。
木の性格(青)を持つ人の庭に、青い石を東(青)に設置することも-αとなる。土の性格(黄)を持つ人の庭に、やはり黄色への-αとなることをやってもいけない。また、白い石を西の方(白虎=白)に設置し、金属の性格(白)を持つ人に見せることもよくない(白が強くなるすぎると言う事)。黒い石を北(玄武=黒)に設置し、火(通常であれば水)の性格を持つ人に見せてもよくない(これまでの記述と矛盾し意味不明。冷たい金属が熱せられるということか?)。このような節理を知って庭全体や、丘陵(野筋)を作るべきである。
また、丘陵には陰と陽の部分を作ること。陽の部分には大きな山を、陰の部分には小さな山を作ると言う事だ。また、滝や河を作る時は以下に注意。左(東)には青竜を置き、右(西)には白虎を置くため、家は南に向かって建て(寝殿造の基本レイアウト)、丑寅(ほぼ北東)より滝を落とすべきである。このように、丑寅の方向から水を流せば、水難に合うことが無くなると言われている。
また、未申(ほぼ南西)の方角へ水を流せば、神王水(神の流れで、勢いが良すぎると言う事か?)なので、戌亥(ほぼ北西)へも流れを作る方が良い。また、神王とは多くの宇賀神(読=うがじん。日本神話に登場する「宇迦之御魂」や、仏教でいう財産の寄付「宇迦耶」に通じるとされる。ここでは、古くから信仰されている神様、程度に意味か?)のこと。特に、弁財天の役に立つ水(智水)となると伝えられている。また、戌亥の方角には神王石と称する切れ目がある石を設置すると良い(神王石は高貴な石であるため)。さらに、足元(家のすぐ側)に設置する石は、禁止事項(戒)に従って、家の縁側よりも背の低いものを使う事(庭ゼミ、では「縁より地形が低ければ、石を設置してはいけない」となっているが、矛盾があるように感じる)。
辰巳(ほぼ南東)の方角より、滝や川を作り水を流してはいけない。逆水と言って、このような方向に流れる水路を、俗に「逆さまに流れる」と言い、忌み嫌われる。ただし、大河の場合など、場所によっては「逆さまの流れ」を認めることも過去にあったため、例外もある(ここもあえて庭ゼミの解釈と変えている。「作庭記」の四天王寺の例にあてはまるため)。
この他に、最も優先すべき石組で不老石と言うものがある。例えば、上をカットしなくても、元々四方が大きな石(四角い巨石と言う意味か?」がそれに当たる。ただし、(四角くても)小さければ意味がない。この石は蓬莱を背中に背負った亀に相当する。これを万脚と言って、不老(蓬莱)の世界を背負っているからだ。だから、亀のような石があったなら、大切に使うとよい。最優先して、不老万脚の石を設置し、その後に他の石を置くこと。
さらに、庭には宗(貴ぶべきこと)と言うべき石がある。1:不老、2:君石、3:敬愛石(臣石)、の3種だ。前期のとおり、不老石が一番目。君石は不老石より小さく、臣石・敬愛石は君石よりさらに小さい。君石は臣石を哀れみ、臣石は君石を仰ぐべきで当然のことだ。
そこで本日の一口アドバイス。
「相克・相性、ランク付け等を非常に重視・・・しかし無意味な煩雑さも?」
(りょう)
十二支と方位他の関係
十二支 |
年を割った余り |
|||||||||||
名称 |
天区 |
西暦-2000 |
||||||||||
1 |
子 |
23時–01時 |
夜半 |
玄枵 |
水 |
陽 |
04 |
08 |
||||
2 |
丑 |
01時–03時 |
鶏鳴 |
星紀 |
北東微北 |
土 |
陰 |
05 |
09 |
|||
3 |
寅 |
03時–05時 |
平旦 |
析木 |
北東微南 |
01月 |
木 |
陽 |
06 |
10 |
||
4 |
卯 |
05時–07時 |
日出 |
大火 |
02月 |
木 |
陰 |
07 |
11 |
|||
5 |
辰 |
07時–09時 |
食時 |
寿星 |
南東微北 |
03月 |
土 |
陽 |
08 |
00 |
||
6 |
巳 |
09時–11時 |
隅中 |
鶉尾 |
南東微南 |
04月 |
火 |
陰 |
09 |
01 |
||
7 |
午 |
11時–13時 |
日中 |
鶉火 |
05月 |
火 |
陽 |
10 |
02 |
|||
8 |
未 |
13時–15時 |
日昳 |
鶉首 |
南西微南 |
06月 |
土 |
陰 |
11 |
03 |
||
9 |
申 |
15時–17時 |
哺時 |
実沈 |
南西微北 |
07月 |
金 |
陽 |
00 |
04 |
||
10 |
酉 |
17時–19時 |
日入 |
大梁 |
08月 |
金 |
陰 |
01 |
05 |
|||
11 |
戌 |
19時–21時 |
黄昏 |
降婁 |
北西微南 |
09月 |
土 |
陽 |
02 |
06 |
||
12 |
亥 |
21時–23時 |
人定 |
娵訾 |
北西微北 |
水 |
陰 |
03 |
07 |