りょうさんの:エクステリア&ガーデンメモ

 

「りょうさんの:ほぼ毎日、エクステリア&ガーデンメモ」・・・NO2,142

 

「日本庭園と日本外構 編」・・・作庭書「築山山水庭造伝・前篇中」⑤!

 

「山水築山庭造伝・前篇中」・・・北村援琴・秋里離島共著 1735年の作

16:三和土の仕様に関する事①

三和土(タタキ)に使う土は、灰と水加減が極めて重要だと伝えられる。軒の土間をタタキにするには、土約114㎏(原文は「土二荷」と表記されている。二荷=天秤棒に壺2つをぶら下げ持てる重さ=100㎏前後と推定される。ただしここでの114㎏と言う数値は後表記に合わせた)と石灰(炭酸カルシウム系の化合物。ここでは消石灰=水酸化カルシウム=Ca(OH)2の事であろう)約60㎏(1表)を混ぜる。ただし、土一荷と言ってもアバウトな重さでしかない。だからここでは約57㎏(15貫目)を一荷としておく(従って、ここ言う土二荷は約114㎏)。

この時の水加減は、かなり固めとする。水の配合に関する古くからの伝えで、土**升・石灰**升などと書かれたものがある。しかし、記述にかなり差があり最適と言うものが見つからない。殆どがいい加減な数値でしかない。なぜなら、土の性質により水の量が違ってくるからである。また、雨の日・晴天の日など、天候によっても水加減が変わる。だから、土何升・水何升が最適と言って提示が出来ないのである。ただ、手で握ってみた時の間隔で判断するしかない。その判断基準は、握ってみた時に固まったように感じるが、手のひらを広げると2つ・3つに割れて崩れ落ちる程度が一番良い(現在で言う「バサ練」と言った具合か?)。

また、晴天の日は少し水を多くする。理由は、調合しておいた材料でタタキを作る作業をしているうちに、早くも材料が固まり始めて、水の量が少ないと支障をきたすからである。だからこそ、少し柔らかめの水加減とする。また、雨の日は少し水を減らし固めの配合とする。この場合はタタキを作る作業をしている時に、柔らかすぎるとべたついて上手く固まりにくいからだ。だからこそ、タタキ材料の水加減は、**だと書かれていることの方がおかしい。

以上のように、固めに材料配合を行っておき、鉄の槌で叩く。鉄は土の水分を表面に呼び出し、締め固めるのに都合が良いからである。だから、鉄の槌を使って良く叩きなさい。次に、泥をコテや竹ヘラでこすり磨いて、凸凹を均一に調整する。洗い仕上げにする時でもこの磨き作業は行う事。その訳は、表面の土を均一化する事に成るからである。

このようにして、軒下の土間を丁寧に仕上げる理由は、この部分は雨がかからず日当たりが良いため、ヒビ割れしやすいからである。だから、念入りに作業を行いなさい。材料の練加減で水が多すぎると、ヒビ割れの原因となる。タタキ作りと言う仕事はその名が示す通り、非常に面倒なものだ。

また、タタキは水をかけた時に、表面を平らにして一定の方向に水が流れるようにしなければならない(均一な表面仕上げと適切な水勾配)。水溜りが出来ると乾いた後にホコリがたまり見苦しい。また、水が走り過ぎても(傾斜が急すぎても)いけない。おおよそ1.8m(1尺)につき3.6㎝(2分)・18m(1丈)につき36㎝(2寸・共に傾斜度2%)が目安だ。これは建物側の石の根元〜軒先(壁元)までの水勾配の目安だ。十分に注意してタタキ土間打ちを行う事。

手水(チョウズ=手を洗う所)の足元や水門の周囲のタタキは、以下の仕様としなさい。土と石灰の配合は前述部分と同じ(土114㎏×石灰60㎏)。ただし、水はかなり多めにする。これらの配合材料を臼に入れてよくかき混ぜる。理由は、柔らかめにして細かな仕事を行いやすくするためだ。その訳を理解しておく事。

池底のタタキは、土約57㎏(一荷)に対して石灰約60㎏(1表・つまり土と石灰をほぼ同量)の配合にしなさい。また、水は絶対に多くしてはいけない。手で握った時に固まる程度が良い。水を入れる池であるから当然の事だ。なお、タタキは水には強いが日照りにわ弱いとよく言われる。

竈(カマド)など火を使う場所(煉土)用のタタキは、以下の仕様にしなさい。土約57㎏(一荷)に対して石灰約60㎏(1表・池とほぼ同量)。ただし、水はかなり多めにする事。そして、配合した土を臼に入れてよく混ぜる。この時、ムシロに入れて足で踏んでも良い。そして、両手に一杯程度の土団子のようにまとめ、それから仕事に臨みなさい。そして、石とタタキ土の境目に後々まで隙間が出来ないようにするために、灰摺(ハイスリ)を使いなさい。灰摺とは石灰を水で固めにとき良く練ったものだ。これを、タタキ土と石の間に塗りつけて、両者をしっかりとくっつけてそれから叩く。

また、火を使う場所のタタキ用石灰については良く吟味する事。新しく湿気を帯びていないもの(風邪をひいていないもの)使う事。そして、既に述べたように、土114㎏(二荷)に石灰60㎏(1表)と言う標準配合ではなく、土と石灰をほぼ同量にする事。

そこで本日の一口アドバイス。

「現在は土間コンクリートで苦労。そして、江戸時代はタタキで苦労・・・」

(りょう)

228:三和土

 

 

 

 

 

三和土(タタキ)工事