りょうさんの:エクステリア&ガーデンメモ

 

「りょうさんの:ほぼ毎日、エクステリア&ガーデンメモ」・・・NO2,144

 

「日本庭園と日本外構 編」・・・作庭書「築山山水庭造伝・前篇下」①!

この項からは、「築山山水庭造伝・前篇下」の現代意訳に移ります。ベースデータは引き続き、大阪市立大学の中谷ゼミです。

 

「山水築山庭造伝・前篇下」・・・北村援琴・秋里離島共著 1735年の作

1:庭を作る順序とセオリー

庭を作る時は、入り口付近(ここでは「建物廻り」と想定される)から奥の方へと仕上げて行くと言う考え方がある。逆に、奥の方から入り口に向かって作って行くと言う考え方もある。しかし、両方とも正しいとは言えない。一般的な庭の作り方は、建物の軒廻り(建物周辺)から始める。そして、軒廻りの石組等をだいたい済ませた段階で、奥のほうへつながりを持たせながら進める。奥の方が終わると、今度は入り口に向かって庭作りを進める。このように骨格作りが終わると、再度入り口付近から奥の方へと、より細部を作って行く。そして最後に軒廻りを仕上げる。これが標準的工事進行順序である。

しかし、樹木・石共に特別に大きなものを、入り口付近に設置するのか、奥に設置するのかでも状況が変わる。入り口付近にそれを設置する場合は、最初に入り口付近作りに取り掛かる。これは特例事項ではあある。だがこのように、基本の作庭順序を守るだけではなく、使うものの大小等も加味して、状況に応じた臨機応変な対応も必要になる。だから、絶対的な作庭順序があるわけではない。

庭の中心部に池を作る場合は、最初に山を作ろうとする場所に、池のために掘り上げた土を盛る。そして、その後で池の形を整える。最初に山作りのために土を盛り上げその大体の形を決めないと、池の大きさや形が定まらない。山に必要な土を確保しないと、全体の土の処理が上手く行かないからだ。一般的に言って、池を掘って出る土は意外に少なく、山を作るために必要な土は意外に多くいる。

池を掘った段階で山を見ると、実物以上に大きく見える。しかし、池に水を入れてみると予想以上に山が小さく見える。この点にも留意しておく事。だから、山と池が近い場合は山を高目にする。両者の距離が離れている場合は山を低目にする。この法則は、巨勢金岡(平安時代の画家。現在の大阪府堺市北区金岡町に住んでいた。金岡の地名も彼由来の物。京都・仁和寺に晩年は住み、作庭にかかわったとも)が作った庭の遠近法(水石を組む)にも通じる。そう、たたむ(組む)という事は遠近法の原理を知ることでもある(巨勢金岡の引用は、以前にも登場)。

2:庭のメインとなる部分

庭は奥の方がメイン(主)となる。入り口の方はサブ(客)となる。この原則は、燈篭のメイン・サブの設置法にも関係する。庭の景観をより良くするためには、入り口の方に60%、奥の方に40%と言う配分を心掛ける事。主(あるじ)は下座から、上座からくる来客を迎える。だから、この場合は上座の方が主となる。ただし、来客から見れば、上座から入り下座へ向かうことになる。だから、下座の方が主となる。

補足事項:主(あるじ)から見た場合と、来客から見た場合とで、メイン・サブの立場が逆転すると書かれている。従って、6対4の関係が極めて不明確。主客の立場はケースバイケースとなり、記述に矛盾も・・・

3:垣に関する事

垣には適切なサイズがある。ただし、予め決められたサイズもあれば、状況に応じてその都度決めるサイズもある。実際に、垣のサイズは、3種・4種・5種等様々ではある。ただし、下の一段目と地面との隙間は21㎝(7寸)と決まっている。この起点から垣の高さに応じてデザイン的に最適な1スパンの長さを決める。だから、その長さは3種・4種と複数になる。

例えば、垣のパネルの一番下から一番上までのサイズが30㎝(1尺)の場合は、1パネルの長さは42㎝(1.4尺)となる。同じように、パネルの高さが36㎝の場合は同48㎝(1.6寸)となる。同42㎝(1.4寸)の場合は同54㎝(1.8寸)。これが、一定のセオリーから算出した寸法だ。

一方、竹垣の場合は(サイズの基本は同じだが)節が横一列に並ばないよう注意しなさい。節の位置はそれぞれ違うように組み合わせる事。この他、杭(柱)と垣パネルの頭の高さは、差が大きいもので5〜6㎝(1.8〜2寸)、例外的には7.5㎝(2.5寸)杭の方を高くする。

4:引き続き垣作りで知っておくべき事

垣を作るためには、知っておかなければならない事がある。それは、庭に設置する垣は必ずパネル自体に隙間がある物にする。理由は、隙間が無ければドロボーなどが入ってきても見えないからである。だから、垣の向こうの樹木が見える事。これは、庭作りの基本的な注意事項だ。

ただし、庭内に見苦しいものがあり、それが見えないようにしたい場合は、隠したい物の前を目隠しの板垣にして、地面から板パネルの下に9〜12㎝(3〜4尺)の隙間を開けなさい。このようにしておけば、ドロボーなどがそこにいても足元が見える。また、高さが低くて見苦しいものがあれば、下の隙間を開けないで目隠しパネルを低いものにすれば良い。このような場合、垣の高さを150㎝(5尺)以上にしてはいけない。これ以下の高さであればドロボーなどの頭が見える。

ただし、御成庭(オナリニワ=高貴な人が住み、庭で謁見するようなタイプ)の場合は垣自体を作らない。そのような庭は、侵入者が隠れるような場所があると、主(あるじ)に危害が加えられる危険性が増して具合が悪いからだ。同様の理由で、手水の周辺には、灯りを置く石、燈篭等を設置し、明るく保つように心がけなさい。

萩垣の萩は7・8月に剪定しなさい。逆に葉が落ちてから剪定するのは良くない。柴垣(細い木の枝を編んで作った垣)の柴は10〜12月に切ったものを使いなさい。葉が青々としているものは良くない。竹の穂垣は成長過程にある竹穂を使うのは勿論だめだ。成長後の竹穂を湯通ししてから使いなさい。板塀の板は焼いてから使いなさい。ただし、焼き目を付けるときに直接燃やしてはいけない。鉄を熱く焼きそれを板にこすりつけて焼き目を付ける事。

生垣には2種類ある。1つは、刈り込みながら作る生垣。2つ目は、透けて疎らな生垣である。刈り込みタイプの場合は、中心部の枯れ枝を出来るだけ切り取り、その後に形を整える。透かしタイプの生垣は、最初に全体の形を整え、その後に中心部を剪定する。生垣で伸びた芽や枝は7〜8月に剪定する。ススキの穂が出た後の剪定は良くない。

この他、葭(ヨシ)垣の葭は穂が出た後の物を使う。丸竹は節を抜いて使う。まぐさ(牧草等の古い呼び方。しかし、ここでは葛や藤のような蔓性植物の総称)や蕨(ワラビ)の繊維で作った縄は湯に漬けてはいけない。水に漬ける事。「まぐさ」は真葛草と書き、葛・藤などの総称である。杭(柱)は地中に埋める部分を焼く事。

そこで本日の一口アドバイス。

「前篇下には、日本庭園の古い技法が示され興味津々!」

(りょう)

230:竹垣(御簾垣)

 

 

 

 

 

 

竹垣(御簾垣タイプ)

 

230:柴垣

 

 

 

 

 

 

 

雑木の枝を束ねた「柴垣」