りょうさんの:エクステリア&ガーデンメモ

 

「りょうさんの:ほぼ毎日、エクステリア&ガーデンメモ」・・・NO2,145

 

「日本庭園と日本外構 編」・・・作庭書「築山庭造伝・前篇下」②!

 

「築山庭造伝・前篇下」最終回・・・北村援琴・秋里離島共著 1735年の作

5:垣の端の処理

垣の端は必ず杭(柱)で固定し、その横に樹木を植える。この樹木の事を垣留(の木)と言う。樹高は垣とほぼ同じが良い。樹種は何でも良い。垣に結び付けても構わない。

6:「袖が香」の意味

「袖が香」とは垣根付近に梅を植える事を言う。この時、あまり枝の茂った梅は良くない。

7:燈篭掴みの樹木とは

燈篭の後ろか周囲に、部分的に枝がかぶさるように樹木を植えなさい。必ず植える事。

8:燈篭の「障り」とは

燈篭の「障(サワ)り」とは、その周辺に樹木を植え、枝葉が部分的にかぶさるようにして、全てが見えないようにする事を言う。これにより、幽閑のイメージが備わる。このような技法を燈篭の「障り」と呼ぶ。こうすることで、(昼間は勿論)夜になっても周辺の庭がその灯りで全て照らし出される事を防ぐことが出来る。だから、樹木を植える事で、昼夜ともに素晴らしい景観を演出できる。

9:手水鉢と樹木の関係

手水鉢の後ろに樹木を植えて、手を洗うため水の前にかがんだ時に、枝葉が少し差し出ている状況がベストだ。ただし、水面に30〜60㎝も枝葉がかぶさっていては使い勝手が悪い。ごくわずかにかぶさっている状態にしなさい。ここに使う樹木は、アセビ、ニシキギ、ナンテン、サカキ、等の常緑樹が良い。その他の常緑樹でも構わないが、虫が付きにくい木を選ぶ事。虫の付きにくい樹木を植えると、手水の水に毒虫が侵入する事も防いでくれる。だから、前記のような樹木を選びなさい。

また、手水周辺の景観演出にも植栽は欠かせない。だから、樹形の良い木を選びなさい。この点は、蹲踞(ツクバイ=複数の石等を使い手水周りを演出したコーナー)手水に関しても同様である。

10:井戸の「会釈の樹」に関する事

井戸には、「井あしらい」と表現する樹木を植える。この樹木は腰をかがめているような感じに植えるので「会釈(エシャク)の樹」とも言う。樹種は、松、梅、柳などが良い。

11:塚の近くに植える樹木の事

塚(土が盛り上げっている場所の総称)の後ろ、てっぺん、その他周辺には植栽を施す。樹木の形は塚の状況により異なる。また、塚の上に枝葉がかぶさり覆うのは非常に良い事とされている。

12:庭造伝と言うこの書物に関するあとがき

著者・北村援琴は、住まい(閑居)を後にして、石が疎らに散らばっている川の流れを求め、趣のある山や水路がある風景を背後にして吟じ、世の原点を深く探求(道=ドウ)し、世の中を少しでも清くすることを求め続けている。また、心が迷いなく落ち着いている立派な人が作った庭を訪ね歩き、どのように素晴らしいものであるかを、絵を描く人にも依頼しながら、図として写し続けた。そして、最高の景観とは何かを追求する助けとした。

何気ない泉や石の眺めを、素晴らしい教えとして悟る人もいる。優しい眺めであるがゆえに、古くからある木が語るものを理解すれば、植栽や庭の景観(築山を意訳)の素晴らしさとは何かを知ることにもつながる。

麓の木立、山の形状、魅力的な池、などは心をより豊かなものにする。だから、それを庭作りの参考材料とする。そして彼は、川の中流に建つ家に、川の水を引き入れその涼しい影でくつろいだと聞く。また、水の素晴らしい特性、山の神髄とは何かをあらためて問い続けた。

池の水と小さな山のコントラストを「隔ての関」と言う。各所の亀島なども訪ねるとそれにちなんだ歌などがある。これらは全て庭と言うものの素晴らしさを表している。

援琴翁の書いたこの書は、自らが山水(庭)の神髄を他の人にも味わってもらうためのものだ。桜の木に花が咲いた時のように、人々に長く語り継がれる事を目的としている。そして、一日以上かけて読み返し、その素晴らしさに改めて感心した。おこがましい事で、岩に根付いた素晴らしい松の下に、わずかに生えた草のようにくだらない者であることも忘れ、巻末にあえて一筆書き加えずにはいられなかった。

補足事項:12項だけは、「山水築山庭造伝」をまとめ上げた北村援琴の資料を、書物とした秋里離島の加筆と考えて良いであろう。ただし、内容が極めて分かりにくいため、思い切った意訳を試みた。従って、原文と多少のずれが生じている可能性もある。

「山水築山庭造伝前篇下」完

そこで本日の一口アドバイス。

「巻末(12項)に秋里離島初登場! でも北村援琴をチョットほめ過ぎ・・・」

(りょう)