りょうさんの:エクステリア&ガーデンメモ

 

「りょうさんの:ほぼ毎日、エクステリア&ガーデンメモ」・・・NO2,157

 

「日本庭園と日本外構 編」・・・作庭書「築山庭造伝・後篇中①!

「築山庭造伝・後篇中」・・・秋里離島著 1828年の作

注意事項:「築山庭造伝・後編」に関しては、他の作庭書以上に図面・イラストが多用されていると推定されるが、残念ながら中谷ゼミ資料に同添付はない。

この項からは「築山庭造伝・後篇中」に移ります。なお、この「後篇中」も「後篇上」と同じ経緯で著されたもので、書物の概要に関しては「後篇上」の冒頭部分を参照して下さい。

1:注釈書(鉄槌)はこう述べている

庭の様子も見方で変わる。簀の子から透けて見える状況にこそ趣がある。その他の、情景も同じだ。

柴垣と言うものは、間に隙間がある垣のことだ。図の通りである。

注釈書で提示されているのは、吉田兼好の徒然草に書かれている事だ。そして、庭の装いは物寂しく、長い年月が過ぎたような自然観のある状況を作り出す。そこに置かれているものも、より一層古めかしく見えるようにしている。

また、庭のイメージは雲の上の様子にも繋がる。表面的なものだけではなく、観る心を大切にして作るべきだ。

補足事項:鉄槌=注釈書。この項のタイトルは、吉田兼好の徒然草の注錯書はこう述べている・・・と言う意味。江戸時代には徒然草鉄槌が多数出回っていた。その1つに「増補鉄槌」があり現存。ただし、ここで登場するのは、どの徒然草鉄槌であるのか、また、徒然草自体を対象としているのか、判然としない。

夫木和歌抄(鎌倉時代後期の私撰和歌集。7,350の和歌が収録されている)の中にある源頼親(平安時代中期の武将)の歌に下記のものがある。「わかれとて問ひとも(別れかと聞いても) なしふるさとの(故郷からの便りはない?) 浅*が庭の(*の文字不明。従って、どのような庭なのか不明) 松むしの声(マツムシの声)」

補足事項:なぜこの和歌を持ち出したのか、意味不明。

2:小さな庭を作る時の心得

*庭を作るときは、大きな庭には小さな庭のイメージを取り入れ、小さな庭には大きな庭のイメージを取り入れる。このような作庭ポイントを知っていると、小さな庭も無限の広がりを見せ、大きな庭も緻密で繊細なものとなる。これこそ 、逆転の発想と言うものだ。作庭家は、書画や建築に通じるものがあり、それを無視してはならない。

これは、書家や画家が優れた墨を得たのと同じだ。書画が優れた墨を得ることによってよし素晴らしいものとなるように、庭もこのように優れた素材を得ることでより素晴らしいものとなる。良い素材を求めることなくして、良い庭を作ろうとするのは素人と同で、素晴らしい作品など生まれない。だからこそ、その重要事項を一・二例を挙げて提示しておく。そして、この点を知っておくと、これまで作られた殆どの庭を創出することができる。

上記した、基本形(真)・少しアレンジしたもの(行)・大きなアレンジを加えたもの(草)の三つの図を頭に叩き込んでおけば、これまで実績不足で、経験したことが無いような庭を作るときでも、大きな庭の図を小さな庭作りの参考にし、その逆も真なりで、多様な状況に応じた奥深く素晴らしい庭を作り出すことができる。見苦しい作品となるようなことは無い。そして、多様な状況に応じた対応と奥深い作品とは、前記一のような庭のことで、「一の真理に全てが具わる」と言う。

例えば、基本形の庭の場合は、守護石は3つ1組の構成となる。しかし、近くに主木を植えてその根元にさらに石を2つ置く。こうすることで、守護石3つ・1セット、守護石3つ・1セット+2石(5石、守護石と拝石の組み合わせ)の状態よりも、より尊い石組みを守っているように見える。だから、このような演出を庭の大小にかかわらず試みると良い。

石の高さ・低さの加減も重要だ。庭の状況に応じて、こちらの石は少し高くして、こちらの石は少し低くする。そして最適の高さバランスを見つけ出す。このようなバランス感覚を身に着けることを、庭の相の墨加減(庭相の墨)と呼ぶ。

庭の大小だけに限らず、大きすぎるものを設置すれば窮屈になる。小さすぎるものを数多く設置すれば、その並べ方にばかり目を奪われ、全体バランスを崩してしまう。だから、設置物のサイズ・数量選択を的確に行い、臨機応変な対応力を身に着け、より奥深い(幽玄)庭を作り出さなければならない。この奥深いと言う意味は、バランス感覚に優れ、大は小を助け小は大を補う、と言う事である。そう、優れたものは相互に助け合う。これこそ「奥深い(幽玄)」と言う言葉の真意だ。

*石組みを1つ・2つほどこして、庭の景観を作り出す。その最良の組み合わせを習得することを「臨機応変さを心得る(黄応の心得)」と言う。その深い意味を示すには、文章だけでは無理がある。だから、七~五図で教えることにする。図を見ながらポイントとなる部分を習得しなさい。先に提示した図は、大きな庭と小さな庭だ。ただ、共に一枚の図だけでは見分けるのが難しい。理由は、小さな庭の図でもあり大きな庭の図でもあるからだ。これは、麗しさ・安らかさを持った庭であり、「一の真理に全てが具わった」作品に他ならない。

そこで本日の一口アドバイス。

「徒然草で格調高くスタート・・・だが、あまりその意味が分からない?」

(りょう)