りょうさんの:エクステリア&ガーデンメモ

 

「りょうさんの:ほぼ毎日、エクステリア&ガーデンメモ」・・・NO2,160

 

「日本庭園と日本外構 編」・・・作庭書「築山庭造伝・後篇中④!

「築山庭造伝・後篇中」・・・秋里離島著 1828年の作

注意事項:「築山庭造伝・後編」に関しては、他の作庭書以上に図面・イラストが多用されていると推定されるが、残念ながら中谷ゼミ資料に同添付はない。

5:殿中の居間の前に作る庭について

殿中の居間の前に作る庭は、殆どが全体を見通せるようにして、樹木をあまり植えない。最も、施主の好みで山林のような部分を庭の中に設ける事もある。ただその場合でも、殿中前の庭は見通し良く清々しい感じに纏める。井戸などの水設備も、流れを重視して悪い部分を流し去ってくれるように作る。安らかで柔和な感覚も忘れてはならない。

石を設置する場合は、基本形を最優先して安定感のあるものにしなさい。植栽を施す時は、施主の要望で山林的な部分を設ける場合でも、居間の正面にそのような場所を作ってはならない。主となる石組に関しては、通常は守護石となるが、それが禅様式に纏める事もある。そのような点については施主の要望による。しかし、このような庭は平らな作りで、石組もまた居間の正面にゴタゴタと並べるようなことは行わない。

垣根や袖垣なども、太く逞しい作り方にしようと、繊細な作り方にしようと、施主の好み次第ではあるが、居間の前の庭に相応しくない構成とならないように配慮しなさい。

6:それぞれの状況に合った庭とは①

*施主の好みによりどのような庭を作っても、どの程度までのアレンジが許されるかを考えてプランを纏めるのが、作庭家のあるべき姿だ。神社の庭に仏教色が強い庭を作っても問題が残る。全てのものは基本的相と言うものを持つ。例えば、武家の庭は勇者のイメージを好む。寺院の庭は人々の救いを表す事が大切。だから、仏説を庭の中に盛り込む。一般の家の庭は、客人の事をよく考えて作る。特に、町家はその家の仕事内容を上手く取り入れる事が大切だ。

このようなポイントを把握する事は、施主の家の特性に合わせて、梅や桜を植えるなど、人の心を考慮する。花があった方が良いか、門があった方が便利かなど、施主の都合や使用状況を考え、家との相性、美しさの表現、機能性、精神性、貴さを重んじるか大衆的であるべきか、親しさを優先すべきか客観的であるべきか・・・など、多角的な視点が必要となる。

徒然草にはこのような事も書かれている。春の夕暮れののどかで艶やかな景色の中、格調のある家屋の奥深くに樹木が林立し茂っている。このような庭を散策した時には、好きな花が枯れかけていれば興ざめしてしまう、云々。この心情を考えると、花の咲く樹木を植える場合は、庭の素晴らしさに負けないくらい、艶があり魅力的なもので無ければならない。その見識を持って植栽を施さなければならない。

殿中などに作る庭であれば、そこに住む姫・奥方の事も考慮すべきだ。奥女中も同様。そして彼女らは、ほぼ座敷一杯に花が咲いていることを好む。だから、花に力点を置くべきだ。町屋の婦人が住む家も同じだ。女性は柔和で美しいものを好む。これがセオリーと言うものである。

寺院や武家屋敷の場合は、義礼・格式が重要視される。施主がどのような好みを持っていても、基本構成はそれぞれのセオリーを重視しなければならない。好みに合わせてアレンジする場合でも、この点を忘れない事。例えば、広い野原に畦道が続いているような風景でも、その基本に合う演出と言うものがある。その方法は、絵画・各種造作物・植物の様相を観察し参考にすることで、会得する事が出来る。ただし、外面だけを見ていてはだめだ。奥に隠れたものの見極めが大切で、その見極めを「絵を見て絵の真の姿(法)見抜く。そして、絵を真の姿で描く」と言う。だから、庭も同じ視点で、表面の美しさ+αがあるように作らなければならない。

庭は多くの場合、自然の海岸、山、河川、等を、その本質を掴みとりかつ写して作る。だから庭の起伏部分にも、一般的な山、急峻な山(岳)、丘、等を使い分ける。水の使い方にも、大海、池や湖、河川などの相違がある。そして、川の場合は滝組周辺の作り方を知らないと、素晴らしい庭は出来ない。海の表現を行う場合は、山の周辺から海の断崖へ水が落ち込む様をどう取り入れるかがポイントとなる。池の場合は水源としての役目がある。川は上流から河口、さらに海との接点をどう表現するかが重要。海・湖・池の水面は遥々とした広がりが無くてはならない。

この他にも、苔は清い流れと地面の境を表現する大切な存在。清い水と周辺の調和を取る極めて重要なものだ。六の図にこの点を示した。以前に提示した図は、水の流れ、泉を取り入れた平らな庭だ。泉や川を野原の中に組み入れ、流れの素晴らしさを表現している。このような様式は、庭作りの1つの極意でもある。このようなセオリーを上手く取り入れる事で、延々と広がる景観を凝縮し、その素晴らしさを庭に取り込むことが可能になる。そう、このようノウハウこそが庭造りの神髄となる。

そこで本日の一口アドバイス。

「殿中の庭〜多様な庭作りの神髄へ。ただ、徐々に抽象的な表現にも・・・」

(りょう)

246:吉野の桜

 

 

 

 

吉野の桜:日本の花を代表する風景。