りょうさんの:エクステリア&ガーデンメモ

 

「りょうさんの:ほぼ毎日、エクステリア&ガーデンメモ」・・・NO2,165

 

「日本庭園と日本外構 編」・・・作庭書「築山庭造伝・後篇中⑨!

「築山庭造伝・後篇中」・・・秋里離島著 1828年の作

注意事項:「築山庭造伝・後編」に関しては、他の作庭書以上に図面・イラストが多用されていると推定されるが、残念ながら中谷ゼミ資料に同添付はない。

10:手水鉢の設置方法

手水鉢で、書院へ向かう途中の居間用として設置するタイプを飾り鉢蹲踞などと呼ぶ。このようなものは大きな書院用だ。もし座敷に合わすと手水鉢も巨大なものにしなければならない。だが、それでは庭の景観を壊してしまう。だから、一般的なサイズにするが非実用的。だから飾りの設置物であるわけだ。一般的座敷の縁側の長さは7.2〜9m(4〜5間)程度。この場合手水鉢のサイズは120〜150㎝(4〜5尺)で、濡れ縁の幅は30㎝(1尺)程度が良い。しかし、大きな書院の場合は、縁側の長さは18m(10間)、幅も2.7m(1.5間)以上ある。床高も高い。このような状況であれば、前述したように、手水鉢のサイズが120〜150㎝ではバランスが悪く、同240〜270㎝(8〜9間)程度が必要となろう。これに応じて、設置場所もかなり離すことに成ろう。だがこんなことをすれば、座敷との兼ね合いも、庭との兼ね合いも、非常に悪くなってしまう。だから、大きな書院の手水鉢は庭の装飾品となってしまう。だから、ここで実際に手を洗うようなことはしない。あくまでも飾りである。

寺院等の大きな方丈でも、広い庭でも手水鉢は設置する。これが無いと恰好が悪くなるからである。だが、濡れ縁から遠く離して大きなものを設置すれば、機能的にもデザイン的にも問題が生じる。だから、飾りとして外見的に似合う一般的サイズの手水鉢を設置する。また、庭の手水廻りが飾りであるため、別に水屋を設置して水場を設けるか、濡れ縁で湯桶を設置する。ただ、大きな書院前の手水鉢は飾りであっても、やはり手水鉢だ。だから、実用品と同じ構成にする。飾りだから特別と言う事では無い。従って、飾り手水でも鉢は庇より外に設置する。大部分の建物には庇があり、提示した図を参考にその設置方法を習得しなさい。

また、手水鉢と言うものは、トイレの近くにある。だから、トイレと建物との間に袖垣を設置し、さらに植栽を施す。こうして、不浄部分と分離する。同時に、不浄部分であればこそ、植え込み・垣根は絶えず綺麗にしておく必要がある。さらに、植栽で半分隠れるようにして燈篭を設置しなさい。図の通りだ。石燈籠・植栽・垣根等の設置方法については、別項で詳しく述べる。

*オーソドックスな手水鉢の設置方法

オーソドックスな手水鉢廻りは、家屋内の障子部分から見えにくい場所で、濡れ縁の端に設置する。図に描いた通りだ。しかし、すべてこの通りに収まるとは限らない。むしろ、アレンジする事の方が多い。だからその例も示しておく。

オーソドックスな設置が出来ない場合は、メインの座敷の次に重要な部屋との境か、少し庭側に寄せて濡れ縁の角に設置する場合がある。ただし、どのような障害があっても、例えば、メインの座敷の奥にトイレがあるようなケースで、手水鉢を置く場所がなくても、次の間からさらに離して手水コーナーを作ってはならない。大切なお客様を遠くへ向かわせる事になるからだ。この点を良く心得ておきなさい。

また、市街地にある家屋などで敷地が狭い場合は、座敷に沿って作業をする場所(手水コーナー)を作ることが出来ないことがあるが、このケースでは、庭の中に離し設置する事もある。このような時はメインの座敷の下座方向に設置する。どのような時も、人の行動というものをよく考えて作りなさい。周囲の条件に合わせて、臨機応変に作ることこそ重要である。

また、手水コーナーの前に設置する石は、蟄石(カガミイシ)・水揚石・水汲石・清浄石の4つセットがセオリーとなる。そして、この4つの石を役石と呼ぶ。水揚石は、手水鉢の先へ半分隠れるような形で置く。蟄石とは濡れ縁手前の留まり石の事だ。青石が最も良いとされる。蟄石に乗るときは、カガム姿勢となる。だから、その名のように、腰を曲げてカガミをのぞき込むような姿を想定して設置する。濡れ縁の手前にあり、そのような様子を思い出して設置しなさい。水汲石と言うのは、地面に置く平らな石のことだ。来客は手を洗うと時に、この石の上に立って、柄杓で水を汲む。だから、水汲石と呼ぶ。清浄石は手水コーナーの後ろ脇に設置する。鉢前から退く時にこの石の上を通る。

追記事項:蹲踞(ツクバイ=手水コーナーセット)は、手水鉢・前石・手燭石・湯桶石の4つが基本セットとなる。ここで記されている、蟄石等はさらに外側に設置する石の事。

メインの手水鉢は、どっしりと設置され頑丈でなければならない。丸石の場合、巌石の場合、橋杭石の場合などが特に有名。ただし、時にはより変わったものもある。いずれにしても、縦横42㎝(1.4尺)×深さ30㎝(1尺)程度のシンクにして、その中に小石を入れて排水口を隠す。そして、シンク内は常に水を入れ替え掃除を行う。排水口を隠すための小石は水たたき、排水口は吸い込みとも言う。大きなもの、小さなものを問わず、以上のポイントをよく理解して設置しなさい。図を参考にする事。

そこで本日の一口アドバイス。

「蹲踞へのこだわりが明確に伝わる。ただ、あまりにも煩雑すぎでは?」

(りょう)

251:蹲踞

 

 

 

 

蹲踞(香川県・興願寺)