みずきりょう の:エクステリア&ガーデンメモ

 

「りょうさんの:ほぼ毎日、エクステリア&ガーデンメモ」・・・NO2,230

 

「日本庭園と日本外構 編」・・・「足立美術館」とその日本庭園②?

引き続き「足立美術館」について。この項では「枯山水の庭」「苔庭」「寿立庵の庭」「白砂青松の庭」「池庭」「亀鶴の滝」、以上6種の日本庭園について(前項の「足立美術館述」案内図参照)述べます。

「枯山水の庭」

「枯山水の庭」は建物中央にある喫茶室・翠の前面に広がる主庭です。その名が示す通り、枯山水式の庭園ですが比較的柔らかな構成で、椅子に腰かけくつろぎながらゆったりと景観を楽しむと言った、座敷観賞を強く意識した庭園と言えるでしょう。逆に、寺院等の枯山水等によく見られるような、精神性・形而上的表現は殆どありません。

白砂の海、グリーンスペースの陸、それに背景の山の借景により大きな広がりを見せる、同様式としてはかなり巨大な庭です。その中央には三尊石を思わせる巨石の石組、その前には枯れ滝組があり、白砂部分へと繋がります。このような組み合わせだけを見ると、前述のような宗教色の強いレイアウトと言えます。ただし、実際の景観は抽象性と写実性の融合が重視され、違和感なく借景へと繋がっていきます。

「苔庭」

「苔庭」は喫茶室・翠とミュージアムを繋ぐ比較的閉鎖性の強い空間に造られています。一般住宅とは比較にならない大きなものですが、一種の坪庭的性格を備えた庭と言えるかもしれません。様式的には枯山水と言う事に成るでしょうが、白砂、杉苔のグリーンスペース、枯石橋を含む石組、赤松による全体のラインは柔らかく、京の雅を強く意識した庭と言えます。なお、赤松は斜めに植えられていますが、これは景観だけではなく、松の負担を軽減すると言う意味を持つとの事。

「寿立庵の庭」

この庭は、茶室・寿立庵にセットされたもので露地です。一般の茶庭と比較すると比較的広い空間ですが、アプローチが長くナチュラル感覚を重視しています。また、「足立美術館」の中では唯一、来館者が足を踏み入れることが出来る庭でもあります。

「白砂青松の庭」

「白砂青松の庭」は「白砂の庭」の左側に位置し、茶室・寿楽庵からの景観も意識して造られた、池泉式庭園で座敷観照を強く意識した構成となっています。大型の滝~池への景観。白砂と松。それに鳥取県の名石・佐治石を使った比較的男性的な石組等で成り立ち、横山大観の絵画の世界を強く意識し作庭されました。

「池庭」

この庭は、喫茶室・清風の前に広がる、池を中心とした池泉回遊式に近い庭園。室町時代の庭園を思わせる、巨石を使いながらも格調高い石組とデザインが印象的な庭でもあります。ただし、来館者が実際に足を踏み入れることは出来ず、ある意味完璧に近いデザインの庭を、あくまでも遠目に観照するしかありません。最高峰の日本庭園ではありますが、形だけにこだわり過ぎている。そのような印象も受けます。

「亀鶴の滝」

「亀鶴の滝」は「白砂の庭」の左奥の飛び地にあります。亀鶴山に造られた落差15mの人工の滝を中心に構成された庭園で、最も自然観を重視したデザイン。また、建物にくり抜かれた壁を通すと、自然の掛軸(生掛軸)のような景観を楽しむことが出来ます。この景色は、横山大観の那智滝と言う作品を意識した物。

以上が「足立美術館」に造られた6つの庭園です。鑑賞と言う視点からは、間違いなく最高峰の庭園です。また、管理も完璧。ただ、鑑賞・精神性(形而上的世界)・遊び、と言う日本庭園の3大要素を総合的に見た場合、残りの2つに関しては殆ど意識されておらず、何か忘れ物をしてきたような印象を筆者は受けます。

そこで本日の一口アドバイス。

「日本最高峰の6つの庭園。でも、鑑賞面以外では何か物足りないものが・・・」

(みずき りょう)

315:枯山水

 

 

 

枯山水の庭:メインの石組

 

315:苔庭

 

 

 

苔庭:都の雅

 

315:寿立庵の庭

 

 

 

寿立庵の庭:露地

 

315:白砂青松の庭

 

 

 

白砂青松の庭:横山大観の世界

 

315:池庭

 

 

 

池庭:格調高い池泉(回遊)式庭園

 

315:亀鶴の滝

 

 

 

亀鶴の滝:15mの人工滝

 

315:生の額絵

 

 

 

白砂の庭:生額絵

 

316:生掛軸

 

 

 

 

亀鶴の滝:生掛軸