みずきりょう の :エクステリア&ガーデンメモ

 

「りょうさんの:ほぼ毎日、エクステリア&ガーデンメモ」・・・NO2,271

 「エクステリア用天然木大研究」第22回・・・エクステリア材としての「スギ」?

針葉樹系のエクステリア材、この項では「スギ」を取り上げます。「スギ」は国産材として最も生産量が多く安価。にもかかわらず、エクステリア用の木材としてはあまり使われていません。なぜでしょうか?

「スギ材」の話に入る前に、「スギ」とはどのような樹木であるのかについて言及しておきます。私たちはこの点に関してあまりにも無知で、それが資源を大切にしなければという気持ちを阻害しているからです。結論から言えば、日本固有の極めて貴重な植物であるということ。分類的には、スギ科スギ属とする説とヒノキ科スギ亜科スギ属とする2説(近年は後者説が有力)があります。そして、スギ属は1属1種の植物で、日本にだけ自生しています。

では、世界基準で見るとスギ科(あるいはスギ亜科)とはどのような存在なのでしょうか。実は古い系統の樹木ですが、現在はあまり反映しておらず、にもかかわらず世界に点在しています。代表的なものとしては、アメリカカリフォルニア州にわずかに自生するセコイア(1属1種・スギ科セコイア属=レッドウッド)、アメリカ南部~メキシコに自生するラクショウ(スギ科ヌマスギ属)、中国南部に自生するメタセコイア(1属1種・スギ科メタセコイア属)、同コウヨウザン(スギ科コウヨウザン属)、同スイショウ(スギ科スイショウ属)、オーストラリア・タスマニア島に10種程度、それに日本の「スギ」など(分類には異説あり)。

以上は何を物語っている荷でしょうか。そのヒントは、上記のセコイア(レッドウッド)にあります。実は、セコイア属の樹木は「スギ」が登場する以前の恐竜が闊歩する時代(おおよそ2億~5,000万年前)に大繁栄しその後衰退していきました。となれば、セコイア系の樹木が生き残りをかけ変化したのがスギの仲間ということになります。だからこそ、世界に点在し貴重な末裔としてその姿を現在に伝えている樹木グループと言えるでしょう。セコイアはレッドウッドの生き残り状況・隆盛時代の環境を見ると、温暖な環境を好み、氷河期を乗り越えることが困難であったと推定されます。だからこそ、かなりの対応力を付けたとわいえ、「スギ」の仲間も温暖なエリアで生き残ったものが多いのではないでしょうか。

日本の「スギ」に話を戻します。「スギ」は屋久島~青森までの広いエリアで自生しています。従って、日本列島の環境にかなり適合して反映した樹木ともいえます。しかし、他の針葉樹と比較すると温暖エリアのウエイトが高く、どちらかというと寒さが苦手とも言えます。また、江戸時代以降は各藩の振興目的で各地で植林されるようになり、これが日本林業のベースを築く要因にもなりました。明治期も含め、飫肥(オビ)杉(宮崎県南部)、日田杉(大分県北西部)、吉野杉(和歌山県)、北山杉(京都府)、天竜杉(静岡県)、山武(サンブ)杉(千葉県)、秋田杉(秋田県・自然林主体)などの名産地が生まれたのもこのため。また、「ヒノキ」と異なり「スギ」は「山地により品質が大きく異なる」とも言われています。従って、名産地=固有の銘木産出地と言った特有の評価も持っています。

遠回りしましたが、では「スギ」のエクステリア材としての評価・現状は。結論から言うと、これだけポピュラーな木材ですが「よくわからない」と言うのが現状。その理由の1つは、産地・原木の状況等で品質が大きく変わるため。2つ目は、エクステリア材としての使用実績が極めて少ないため。

1については、実は産地というよりも、使用木材の状況によります。「スギ」は本来大木になりその芯材(赤身)はかなり耐久性に優れているとされています。しかし、エクステリア材として使用されるものはコスト上の問題で、大半が植林材・間伐材。となると、耐久性に課題が残り、アバレ(ソリ・ヒネリ・ヒビワレ、等)も当然気になります。

2については、昭和前半頃までは焼杉加工を施すなどして、板塀等に多用されそれなりの評価を得ていました。しかし、良質の外材が出回ると、使用頻度が減り、品質面のデータ不足、材料選別・加工・施工技術不足、等の状況に至り、「どのような評価を下すべきか良くわからない」と言う状況に至った次第。

だから、現状で「スギ」はプロ用のエクステリア材としては不適格と言った評価を下さざるを得ません。ただし、地産池消と言うエコ発想を見直し、産地とタイアップし良材をローコストで仕入れ、適切な加工・施工技術を習得すれば、大きなメリットが生まれる可能性を秘めています。従って、輸入材とは別視点の地域密着型で市場開拓を行うべき素材と言うべきでしょう。

そこで本日の一口アドバイス。

「あらゆる視点で再注目すべきスギ! だから、地産池消と言う別視点で見直そう!」

(みずき りょう)

22:焼杉塀

 

 

 

 

 

焼杉材を使った板塀

 

22:スギ板

 

 

一般的なスギ板の表面

 

21:板材(スギ)

 

 

 

 

 

板材

 

22:原木

 

 

 

 

 

原木(産地・太さ・芯材or辺材等により品質が異なる)

 

22:スギ林

 

 

 

 

日本中にスギの人工林が・・・

 

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整備の行き届いたスギ林

 

22:関の甕杉

 

 

 

 

 

 

 

関の甕杉(青森県):スギは本来巨木となる。

 

22:ラクショウ

 

 

 

ラクショウ(北米大陸南部原産):スギ科ヌマスギ属の落葉針葉樹

 

22:トゥーレの木

 

 

 

 

トゥーレの木(メキシコ):ラクショウの巨木

 

22:メタセコイア

 

 

 

 

 

メタセコイア(中国南部原産):スギ科メタセコイア属の落葉針葉樹