みずきりょう の:エクステリア&ガーデンメモ NO3,023

「天然素材の魅力」第56回・・・君は「芝生」を本当に知っているか?

筆者が推奨する匍匐性(地を這うタイプ)グランドカバーを紹介してきました。その最後に、「芝」(芝生)を取り上げます。古来より最も多少されて来た植物であるからです。でも、現代住宅用として特に推奨したいとは思えない一面も。だから、最後に取り上げる事にしました。何故か・・・

<多種多様な「芝」・・・その実像とは?>

「芝」(芝生)=2つの解釈がある。1つ目は、イネ科シバ属シバ「学名=Zoysia(シバ属)  japonica  Steud」を指す場合。2つ目は、イネ科の植物で、匍匐性グランドカバーとして使われるものの総称。このコーナーでは後者の定義を採用。

「日本(和)芝」=日本に自生している「芝」。「ノシバ」「コウライシバ」「ヒメコウライシバ」「ビロードシバ」「TM9(「コウライシバ」の改良種)」等。草丈が短い物が多く、また日本の気候になじんでおり、比較的管理が楽。

「西洋(洋)芝」=日本以外に自生する「芝」。夏に美しい夏型種(「バミューダグラス」「テフトン419」、等)と、冬に美しい冬型種(「ベントグラス類」「ライグラス類」「ブルーグラス類」「フェスク類」、等)に分かれる。剛健種が多いが、成長が早く草丈も長い物が多いため、管理に手がかかるものが多い。

「芝」(芝生)って何でしょうか? 誰でもが漠然としたイメージを持っていますが、正確に答えるのは意外に困難。ここでは<イネ科の植物で、匍匐性グランドカバーとして使われる植物の総称>としておきます。つまり、多種多様な「芝」があると言う事です。ただし共通した特性として、全て「ススキ」のような細長い葉を持つ、踏み付けに強い、陽光・風通しの良い所・水はけのよい土壌を好む・・・と言った特性を上げることが出来ます。また言うまでもなく、世界中で最も多用されて来たグランドカバーでもあります。逆に言えば、狭小地には不向きな匍匐性グランドカバーでもあり、このため日本の現代住宅に関しては、あまり推奨していません。

もう1つ大切な事は、「芝」には冒頭で示した通り多くの種類と、グループごとの特性があります。つまり、その性質を知って使わないと大失敗・・・と言った事にも。具体的には、元々日本に自生していた「日本芝」と、日本以外に自生している「西洋芝」に大別。「日本芝」の場合は草丈が比較的短く、芝刈り階数が少なくて済むうえ、我が国の風土にもなじんでおり、扱いやすい物が多い。一方、「西洋芝」の場合は、剛健種が多いが、草丈の長いものが主体で、芝刈り回数が増え手がかかる。また、夏型種(暖かい時期に成長し美しい)・冬型種(寒い時期に成長し美しい)に分かれる為、目的に応じた選択を!

*「日本芝」の種類と特性(夏型種・冬型種に分類すると全て夏型種)

「ノシバ」=日本全土に自生。剛健種で繁殖力も旺盛。草丈は10㎝程度。葉幅が少し広く堅い。このため、やや粗目の外観と、座った時にチクチクするのが特徴。

「コウライシバ」=「本高麗」とも呼ぶ。本州〜九州に自生。「芝生」として最も多用。葉幅が細く柔らかい。このため触れた感覚が良い。比較的高温を好む(冬には葉が完全に枯れる)。草丈も通常10センチ以下で、管理も楽。

「ヒメコウライシバ」=「コウライシバ」よりさらにキメ細かな感じ。従って、ゴルフ場のグリーンなどに使われることが多い。

「ビロードシバ」=非常にきめ細かい。従って、匍匐性グランドカバーとしてより、観賞用として使われることの方が多い。

「TM9」=サントリーが作出した「コウライシバ」の改良種。より草丈が短いので、芝刈り階数が少なくて済み管理が楽。ただし、値段が高い。

*「西洋芝・夏型種」の種類と特性

「バミューダグラス」=日本の「コウライシバ」に近いが、草丈は20〜50㎝と長い。このため、芝刈り階数が多くなる。

「テフトン419」=アメリカのテフトン農場で作出された「バミューダグラス」の改良種。特に暑さに強い。

*「西洋芝・冬型種」の種類と特性

「ベントグラス類」=生育気温が15〜25℃と低く耐寒性がある。従って、寒冷地・山間部のゴルフ場などに最適。草丈は30〜50㎝で、管理には手がかかる。

「ライグラス類」=生育が早く密度も濃い。従って、運動場などによく使われる。ただし、暑さと踏み付けには弱いと言う欠陥もある。

「ブルーグラス類」=最も耐寒性のある「芝」の一つ(「ベントグラス」より強い)。また、病害は少ないく、成長も遅い。ゴルフ場のフェアウェイなどの良く使われる。

「フェクス類」=冬型に入れたが、夏型・冬型の両方の性質を兼ね備える。頑健で成長も早く、草丈も長い。この性質を活かし、道路の法面(ノリメン)などによく使われる。

そこで本日の一口アドバイス。

「実は芝生の性質は千差万別。一番無難なのはやはりコウライシバと言う事に・・・」

(みずき りょう)

56:芝生

 

 

 

 

 

誰もが知り、古来から使われて来た「芝生」

56:マット苗

 

 

 

 

「芝生」のマット苗

56:ノシバ

 

 

 

 

 

「ノシバ」(日本芝・夏型種)

 

56:コウライシバ

 

 

 

 

「コウライシバ」(日本芝・夏型種)

 

56:TM9

 

 

 

 

 

「TM9」(日本芝・改良種・夏型種)

 

56:テフトン

 

 

 

 

 

「テフトン419」(西洋芝・改良種・夏型種)

 

56:ベント

 

 

 

 

「ベントグラス」(西洋芝・冬型種)