みずきりょう の:エクステリア&ガーデンメモ NO3,027

「世界のガーデン」 第三章:9ヶ所のペルシャ式庭園⑤

第9回:「アッバース・アーバード庭園」

世界遺産に指定された9ヶ所の「ペルシャ式庭園」を紹介中。この項では、イラン北部にある「アッバース・アーバード庭園」を取り上げます。ただし、16世紀〜17世紀初頭にアフガン族との抗争で破壊され、現状では半遺跡と言った形となっている為、極めて資料が乏しい状態。そこで、当コーナーでは<「Pas Todeyのアッバース庭園紹介ページ」(左をクリック)>から大半の情報を得ました。

「アッバース・アーバード庭園」はイラン北部のマーザンダラーン州にあり、カスピ海に面した丘陵地帯に位置します。同州自体がイランのイメージと異なり、緑に囲まれ多数エリアを持っており、庭園周辺も砂漠イメージは全くなし。このため、ペルシャ式と言うより、ヨーロッパ庭園のような印象さえ受けます。ただし、庭園構成を見ると「ペルシャ式庭園」に含まれることがよく分かります。

「アッバース・アーバード庭園」は400万年の歴史があるといわれる、ヒカルニアの森に造られたため、植物との共存を強く意識したレイアウトとなっています。作庭はサファヴィー朝時代(1,501〜1,736年)の1611年頃に完成しました。当時の技術の粋を集め、丘を切り崩し、そこに階段状の敷地を創り出し、さらに大規模な灌漑システムを整備したとの事。

豊かな水の源となるのがダム湖で、驚くべきはそこに貯えられた豊かな水を使い、ハンマームと呼ばれる公衆浴場まで完備しました。また、600mにも及ぶ水路(水の供給施設)が整備され、まさに<水と緑の庭園>を呼ぶべき存在でした。その広さは500ヘクタールにも及びます。また、庭園から186mの所には2つのレンガ造りの塔があり、そこから全体を見渡す事が出来ます。

庭園・建築物のレイアウトを見ると、完全なシンメトリー(左右対称)に造られており、中央の池・その周辺の小さな池・なども配置され、<他に類を見ない「ペルシャ式庭園」>であったと言われています。また。「アッバース・アーバード庭園」は眺望も抜群で、北側にはベフシャル平原とカスピ海、南側にはダム湖を見渡す事が出来ます。

完全に整備された観光地ではないため、訪れる人は意外に少ないようです。だが、そのような条件が逆に緑に囲まれた森閑とした空間を創り出しており、そこに佇むと、悠久の歴史と時の流れを超越した異空間を満喫する事も・・・

州内の森

 

 

 

 

 

 

マーザンダラーン州内の森・・・同中には砂漠イマージとは異なるこのような緑豊かなエリアも

地図

 

 

 

 

 

マーザンダラーン州(地図)

庭園

 

 

 

 

 

半遺跡化した「アッバース・アーバード庭園」

湖

 

 

 

 

 

ダム湖に浮かぶ庭園施設

アップ

 

 

 

 

 

庭園施設の内部

風景

 

 

 

 

 

周辺の風景