みずきりょう の:エクステリア&ガーデンメモ NO3,029

「世界のガーデン」 第三章:9ヶ所のペルシャ式庭園⑦

第11回:「ドーラト・アーバード庭園」!

イランの世界遺産指定庭園。7番目に取り上げるのは「ドーラト・アーバード庭園」。同庭園はイランの中央部に位置し、砂漠の真っただ中にあります。ただし、資料が極めて乏しく、今回もまたまた<Pars Today>の記事を参考にさせて頂きました。

「ドーラト・アーバード庭園」はヤズド州の州都ヤズドにあります。ヤズド州は文字通りイランの臍とも言える中央部に位置し砂漠の真只中。ヤズドも典型的な砂漠の中の街で、しかも標高が約1,200mと高いため、冬はしのぎやすいのですが、夏は気温が40度を超える酷暑との事。

にもかかわらず人口は60万人を超え、州全体の70%以上の人が住んでいます。歴史も古く都市の根幹が創られたのは3,000年以上前。従って、伝統ある砂漠都市の全てを備え、特にヤズドのカナート(地下水路を活用した灌漑設備)は有名。また、「ゾロアスター教」信者が多い事でも良く知られています。

「ドーラト・アーバード」庭園は、「アフシャール朝」(1,736〜1,750年)終期〜「ザンド朝」(1,750〜1794年)初期にかけて造営されました。従って、260年程の歴史を持つ庭園と言えます。特に、「ザンド朝」時代には歴代王の滞在場所となり、重要な役割を果たしました。モハンド・タギー・ハーンと言う王の時代には、多くの植木が追加され通りへと繋がっていました。このため、通りは1,000本の樹と言う意味のザール・デラフトと呼ばれるようになり、幅5m・長さ20㎞に及んだと伝えられています。前述の通り「ヤズド」は砂漠の街です。そこにこのような景観が広がっていた訳で、ある意味驚異的とも言える光景がそこにあったと言う事。「ドーラト・アーバード庭園」の作庭当初は、街の外にありましたが、市街地の拡大に伴い、その中心部に位置するようになり、まさに市街地のオアシスになったと言う事。

メイン建造物は八角形の特色あるもので、3つの大きな部屋を持ち、中心部には大理石製の貯水槽があり、極彩色のガラスで装飾された玄関がそこに映し出されます。つまり、計算されつくした演出も同庭園の大きな特徴となっていると言う事。勿論、贅沢に水を使った構成も「ドーラト・アーバード庭園」の大きな魅力で、八角形の建造物前からわき出し、池に入り、さらに水路で繋がり別の複数の池へと流れ込み、まさに地上の楽園を創り出して行きます。同時に、幾何学的に正確な間隔で植えられた樹木とのコラボレーションも、庭と建造物の魅力を引き立てており、屈指の「ペルシャ式庭園」の一つと言えるでしょう。

ただし、「ガージャール朝」(1,796〜1,925年)になると、以前ほどには活用されなかった模様で、本格的な補修もあまり行われなかったようです。ようやく、1930年代に入り大掛かりな改修が行われ、現在の姿もこの時以来の物と考えて良いでしょう。

800px-IranYazd-SVG.svg[1]

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤズド州の地図・・・イランの中央部に位置し、殆どが砂漠地帯。

 

カナート

 

 

 

 

 

 

「カナート」・・・砂漠都市の生命線となった灌漑設備

 

ヤドスの街

 

 

 

 

 

ヤズド・・・まさに砂漠の真っただ中に築かれた歴史的大都市

 

4bhk9f21f2c1ea1li5_800C450[1]

 

 

 

 

 

「ドーラト・アーバード」庭園・・・八角形の建物と特色ある塔

 

4bpre6c1129ecf17sxn_800C450[1]

 

 

 

 

 

「ドーラト・アーバード」庭園の遠景