みずきりょう の:エクステリア&ガーデンメモ NO3,030

「世界のガーデン」 第三章 9ヶ所のペルシャ式庭園⑧

第12回:「パフラヴァンプール庭園」!

イランにある世界遺産指定のペルシャ式庭園を紹介中。今回はメフリーズと言う都市にある「パフラヴァンプール庭園」を取り上げます。ただし、この庭園も極めて資料が乏しいため「Pars Today」からの引用となります。

メフリーズはヤズド州メフリーズ郡の主要都市。と言っても人口は3万人を割り込んでいる為、観光客が訪れる機会も多いとは言えません。「パフラヴァンプール庭園」は素晴らしい建造物(庭)ですが、実際に目にした日本人は極めて少ないと推定されます。なお、ヤズド州はイランの中心部、しかも砂漠の真只中。詳細については、「第三章 9ヶ所のペルシャ式庭園⑦」(前項)を参照して下さい。

「パフラヴァンプール庭園」はメフリーズの南東部にあります。作庭されたのはガージャール朝時代(1,779〜1,925年)で、イランに現存する「ペルシャ式庭園」が最も多い時代の作品でもあります。また、ヤズド州は殆どが砂漠地帯ですが、同庭園のあるエリアは比較的水に恵まれ、カナート(地下水を使った灌漑設備)も充実している為、恵まれた地域にある庭の一つでもあります。

この庭園はイランの伝統的設計に基づき作庭されています。同時に、建物も含め<自然との調和>が魅力の一つにもなっています。

「パフラヴァンプール庭園」の歴史に少し触れると、前述のごとくガージャール朝時代の作庭ですが、同王朝と時代が重なる別民族の王朝・サンド朝(クルド系民族の国? 1,750〜1,794年)の特徴もあるとの事。王朝同士の交流があったためか、一時期サンド朝系民族が所有していたためか、理由は定かではありませんが、この点も見逃す事のできない特性と言えるでしょう。なお、「パフラヴァンプール」と言う庭園名は、ヤズド商人・アリー・パフラヴァンプールの名前が充てられたもの。従って、彼が作庭者か一時期所有していたと推定されます。

この庭園の規模は約5ヘクタールで、玄関・宮殿(3階建て・建面積約1,500㎡)・冬を過ごすための建物・管理人用の建物・公衆浴場・台所等から成り立ち、これらが美しい庭で結ばれています。ただし、ただ建物と建物を結ぶために庭園があるのではなく、むしろ庭園自体が主役でその要所に建物が存在すると表願したほうが適切。この点はイランの伝統的建造形式を踏襲しています。

宮殿は庭園の中央部にあり、広い池とセットになっていると言う構成を考えても、建物主・庭園従と言う考え方ではなく、庭園全体の構成がまず考えられ、それぞれの役割に応じた建物が配置された・・・と考えた方が自然であるため。このような発想は、ある意味日本の建造物と似ているかもしれません。

ただし、冬を過ごすための建物はパフラヴィ―朝(1,925〜1,979年)のもので、長い時間をかけて現在の姿となったことが分かります。また、水が豊富に使われ、池・水路が発達しているだけではなく、プラタナス・ザクロ・アーモンドなどの樹木がふんだんに使われ、植栽の美しさにも定評があります。また、庭園全体が(殆どの「ペルシャ式庭園」と同様)塀で囲まれており、このような形式を「サラセン式庭園」と呼ぶ事もあります。

4bpr24bc70405018622_800C450[1]

 

 

 

 

 

庭園遠景・・・豊かな緑がこの庭園の特色の一つでもある。

4bprbaa7c6547818621_800C450[1]

 

 

 

 

 

宮殿・・・建物、水、植栽の調和が素晴らしい。

4bprea048478bc18623_800C450[1]

 

 

 

 

 

別角度から見た宮殿

4bprdca44113a718624_800C450[1]

 

 

 

 

 

宮殿内部

4bpre5b7f4ed5518626_800C450[1]

 

 

 

 

 

中庭