「世界のガーデン」第七章:「平面幾何学式(フランス式)庭園」
第52回:「ベルヴェデーレ宮殿」&庭園
オーストリアの「平面幾何学式(フランス式)庭園」を紹介中。「シェーンブルン宮殿」に続きこの項では「ベルヴェデーレ宮殿」とそこに併設された庭園を取り上げます。
「ベルヴェデーレ宮殿」も首都ウィーンにあり、その地域は<ウィーン歴史地区>と呼ばれ、(「ベルヴェデーレ宮殿」を含めた)エリア全体が世界遺産に指定されています。
宮殿の歴史を辿ると、「ハウス・ブルグ家」につかえていた「プリンツ・オルゲン」と言う人物が、当時の著名な建築家「ヨーハン・ルーカス・フォン・ヒルデブラント」に依頼し、夏の離宮として1,720~1,716年に下宮、その後1,720~1,723年に迎賓館となる上宮を建造したのが始まりでした。ただし、彼の死後主家(ハウス・ブルグ家)の「マリア・テレジア」に売却され、その後同家の宮殿となりました。また、「ナポレオン」が失脚した後に開催されたウィーン会議では宴会場として使用された・第二次世界大戦後の1,955年には連合国とオーストリアの間で結ばれたオーストリア国家条約調印の場となるなど、数多くの歴史舞台にも登場しています。
宮殿の構成を見ると、南側に上宮・北側に下宮が対面上に配され、その間に主庭となる広大な庭園が広がっています。また、上宮の入り口前には前庭とでも呼ぶべきグリーンスペースも広がっています。そして、全体はバロック様式でまとまられており、オーストリアを代表する歴史建造物である事は言うまでもありません。
現在の上宮は、中世~現代にいたる同国最大の美術館となっています。「クロード・モネ」「ビンセント・ファン・ゴッホ」「マックス・ベックマン」作品、アール・ヌーボーの代表作(絵画)「接吻」「ユディト」、「グルタフ・クリムト」作品の世界最大のコレクション・・・などで広く知られています。また、「シュロスカフェ」と呼ばれる飲食スペースもあり、庭園を一望しながらオーストリア料理とウィーンのカフェ文化を楽しむ(下記画像参照)ことも出来ます。
一方、下宮は芸術展用の特別会場となっています。ただし、2,021年末完成の予定で大規模な改修が行われており閉館中。同改修が終わるとヨーロッパを代表する芸術系展示会場として復活する事になります。
上宮と下宮の間にある庭園(主庭)は、宮殿当時からすると縮小されたとの事。それでも、バロック時代の雰囲気を伝えるフランス式(平面幾何学式)庭園である事に変わりはなく、上宮からは野外階段でつながり、その前には「鏡の池」と呼ばれる大きな池が配されています。
そこから敷地が下がり、その段差を活かしバロック彫像に挟まれた階段状の水路。さらに、幾何学状に刈り込まれた広大なグリーンスペース(ボスケ)、軸線(ビスタ)ともなる通路等が広がり、下宮へと繋がっています。
また、上宮側の入り口横にはウィーン大学の植物園などもあり、宮殿・庭園観光と合わせて楽しむことも出来ます。
上宮内の「シュロスカフェ」から望む庭園。その先には下宮が見える。
上宮の入り口付近・・・その前方には前庭が広がっている
庭園からの上宮遠景
庭園からの上宮近景
下宮
下宮内部・・・芸術展用の会場(改装中。2021年末に完成予定)