みずきりょう の:エクステリア&ガーデンメモ

 

りょうさんの:ほぼ毎日、エクステリア&ガーデンメモ」・・・NO2,316

 「現代住宅植栽考」 第36回・・・オーソドックス派のシャラ・エゴ①!

落葉樹の人気シンボルツリーを紹介中。ヤマボウシとその仲間に続いては、オーソドックス派のシャラ・ヒメシャラとエゴノキを取り上げます。

「仏教色の強い、シャラ・ヒメシャラ」

シャラ(沙羅)は日本では仏教三大聖樹・沙羅双樹の代替木(詳しく後述)として使われるため、大変ありがたい樹木と言ったイメージがあります。その一方で、樹形美しく花も可憐と言った特性を持ち、人気のシンボルツリーにもなっています。では、シャラとその仲間ヒメシャラ(姫沙羅)の実像とは?

シャラはツバキ科ナツツバキ属の落葉高木で、学名は「Stewartia(ナツツバキ属) pseudocamellia」。宮城県以西の本州、四国、九州と広いエリアに自生しています。一方、ヒメシャラはツバキ科ナツツバキ属の落葉高木で、学名は「Stewartia(マツツバキ属) monadelpha」。自生地は、神奈川県より以西の本州太平洋側、四国南部、九州、屋久島など。以上を比較すると、両者は同じナツツバキ属ではあるが別種の樹木と言う事(変種や園芸種では無い)になます。

共通の特性としては、葉は楕円形で落葉樹としては比較的厚み・光沢がある、6月ごろに白い美しい花を咲かせる、成長すると樹皮が剥がれツルリとした木肌になる・・・など。相違としては、ヒメシャラの方が花・葉ともに小さく、樹皮が剥がれた幹がより赤いと言う点。ただ、ヒメシャラの方が大型に育つので誤解の無いように。また、ヒメシャラは暑さに弱いとする説もありますが、分布図を観ても分かるようにむしろこちらの方が強いと筆者は考えています。事実、屋久島で大木に育ったヒメシャラを多数目撃しました。

さて話を元に戻し、シャラと仏教との関係について。前述のように、仏教には三大聖樹木と言うものがあり、非常に大切にされています。一つ目の聖樹はお釈迦様が生まれたところに生えていた無憂樹(マメ科)、二つ目はお釈迦様が悟りを開いた場所にあった印度菩提樹(クワ科イチジク属)、そして、三つ目がお釈迦様が没した場所にあった沙羅双樹(フタバガキ科)です。

しかし、三つ共熱帯の樹木で日本では育ちません。そこで、代替え木が使われるようになったと言う次第。結果、代替え菩提樹としては葉の形が似ているシナノキ科の樹木、同沙羅双樹(恐らく、学名「Shorea robsta」に似た漢字を当てはめた名)にはナツツバキを当てたもの。そして、本家本元の名前がいつの間にか代替え木の名前としても定着したと言う次第。ただし、印度菩提樹の詳しい形状を知らない筆者には、それがなぜナツツバキ(沙羅)であったのかは分かりません。

さらに付け加えるなら、なぜか一つ目の聖樹・無憂樹の代替え木と言うものを聞いたことがありません。

そこで本日の一口アドバイス。

「樹形よし・花よしのシャラ! でも、沙羅と沙羅双樹は別物。念のため」

(みずき りょう)

36:樹形

 

 

 

 

 

 

シャラの樹形

36:幹

 

 

 

 

シャラ・若木の幹(比較的木目細かい)

36:花と葉

 

 

 

 

シャラの花と葉

36:ヒメシャラ(花と葉)

 

 

 

 

 

 

ヒメシャラの花と葉(シャラより細かい)

36:樹皮

 

 

 

 

 

シャラの幹(成長すると樹皮が剥がれる)

36:ヒメシャラ(樹皮)

 

 

 

 

ヒメシャラの幹(樹皮が剥がれた幹はヒメシャラの方が赤い)

沙羅双樹

 

 

 

 

本物の沙羅双樹(フタバガキ科)の花

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りょうさんの:ほぼ毎日、エクステリア&ガーデンメモ」・・・NO2,315

 「現代住宅植栽考」 第35回・・・「ヤマボウシ」とその仲間たち③?

ヤマボウシの仲間を紹介中。この項では常緑ヤマボウシを取り上げます。常緑樹のシンボルツリー紹介は三羽烏(シマトネリコ・ソヨゴ、ハイノキ)で一応紹介を終了していますが、常緑ヤマボウシは最近少しずつ普及率がアップしているため、ここで補足的にピックアップ。

「謎だらけ・常緑ヤマボウシ」

常緑ヤマボウシはミズキ科ミズキ属の常緑高木ですが、それ以下が判然としません。つまり、ミズキ属ヤマボウシ亜属***とすべきか、ミズキ属***とすべきか曖昧と言う事。つまり、日本のヤマボウシとどの程度近い樹木かよくわからないと言う事。ただし、外見的には常緑で葉肉がやや厚いと言う以外、非常に良く似ています。その意味では、ハナミズキより近い。そんな気もしますが・・・

また、常緑ヤマボウシには、ホンコンエンシス、ヒマラヤヤマボウシ、サマーグラッシー、ガビサンヤマボウシ、月光などがありますが、それぞれの系統・関係は不明(ただし、月光は園芸種)。学名も「Cornus(ミズキ属) hongkongensis」となっていますが、この中にヒマラヤヤマボウシ等も含まれるのか、別系統の樹木なのかも不明です。

原産地については、中国南部〜ヒマラヤ方面と言われています。しかし、そのエリアもまた曖昧で、樹木名から自生地・産地を類推する以外になく、これまた極めて不可解と言わざるを得ません。

分類系統と実際に販売されている各種常緑ヤマボウシの関係も極めて不可解です。例えば代表的なホンコンエンシス、ヒマラヤヤマボウシを比較しても、紹介写真により特性が逆になっているようなものも珍しくありません。具体的には、前者は花ビラ(実際には総包)に丸みがあり、葉は細長い。後者は花ビラが細長く、葉はやや丸みがある。そのような写真が多いのですが、全く別のケースも多数見られ、少なくとも一般人が目にする事の出来る信頼性の高い資料(学術的資料)は殆ど存在しません。

常緑ヤマボウシは中国から輸入された樹木である事はまず間違いありませんが、「売れれば系統などどうでも良い」・・・そんな日本のグリーン業界の節操の無さを強く感じます。従って、筆者の場合は客様から特別な指示が無い限り常緑ヤマボウシは使いません。

もし常緑ヤマボウシについて、学術的立ち位置(正しい分類、各分布系統、それぞれの樹木の特色)、輸入系統と日本への導入歴史・・・などに詳しい方がいるならば、ぜひ連絡を下さい。また、正しい資料を纏め公開していただくよう、この機会を通じお願いしておきます。

そこで本日の一口アドバイス。

「常緑ヤマボウシの不可解な実態。売れれば良いと言う感覚に疑問!」

(みずき りょう)

35:樹形(ホンコンエンシス)

 

 

 

 

 

 

常緑ヤマボウシの樹形(ホンコンエンシス?)

35:花と葉(ホンコンエンシス)

 

 

 

 

 

 

ホンコンエンシス?の総包・花・葉

35:ヒマラヤヤマボウシ

 

 

 

 

 

ヒマラヤヤマボウシ?の総包・花・葉

35:実

 

 

 

 

 

常緑ヤマボウシの実(日本のヤマボウシとほぼ同じ)

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りょうさんの:ほぼ毎日、エクステリア&ガーデンメモ」・・・NO2,314

 「現代住宅植栽考」 第34回・・・「ヤマボウシ」とその仲間たち②?

この項からはシンボルツリーとして人気のヤマボウシの仲間を紹介。まずはハナミズキを取り上げます。

「アメリカからの贈り物・ハナミズキ」

ハナミズキは北米原産の樹木で、ミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属の落葉高木。学名は「Benthamidia flrida」。以上により、ヤマボウシと極めて近い間柄(同じヤマボウシ亜属、別名:アメリカヤマボウシ)、北米の比較的暖かい地域に多く同地域では代表的存在の樹木(学名が「florida(フロリダ)」)・・・と言った事が分かります。

実は、ハナミズキにはその特性以上に、重要なエピソードがあります。<1912年に日本が友好のためアメリカ・ワシントンにソメイヨシノを送り(現在もポトマック湖畔等で花見の名所となっていることは周知の通り)、1915年にその返礼として贈られて来たのがハナミズキ>と言うもの(日本を代表するソメイヨシノの返礼であり、当然、ハナミズキもアメリカの代表的樹木)。

そして、ソメイヨシノがアメリカにすっかり定着したように、ハナミズキも今では日本で代表的な植栽用樹木となり、公園・街路・住宅などで主役的地位を占めるようになったことは周知の通り。20年以上前には、値段が高いと言う難題がありましたが、現在では大量育苗され、誰もが手軽に入手出来るようにもなりました。

では、ハナミズキの特徴と、ヤマボウシとの相違について確認しておきます。まず特徴としては、赤・白花がありより花が艶やか、ただし花のように見えるのは総包(花を包む葉・ミズキ属の特徴)、花期は5月中旬〜後半、株立ちが無い、炭疽病などに侵される危険性がある・・・などを上げることが出来ます。

続いて上記を参考にヤマボウシとの相違。花期が異なる(ヤマボウシの方が少し遅い)、ハナミズキは花が先行するがヤマボウシは葉が出てから花が咲く、両者ともに赤い実を付けるがハナミズキは光沢がありヤマボウシは筋があり無光沢(ハナミズキは食用にならないが、ヤマボウシは食用になる)、両者とも樹皮に多くのヒビワレがあるがハナミズキの方がより細かい・・・などが主な点。従って、花・実の時期であれば両者の見分けは簡単。それ以外の季節では判別はやや困難ですが、樹皮等により区別できます。

では、シンボルツリーとしてはどちらがお勧め? 勿論、個人の趣味により異なるので応える事は不可能。ただ、より艶やかさを好むか、装飾性の強い外構・ガーデンにはハナミズキ、シンプルでモダンな外構・ガーデンには清楚で株立ちがあるヤマボウシ向きと言えるかも知れません。

そこで本日の一口アドバイス。

「艶やかさのハナミズキ・清楚さのヤマボウシ。両社とも超人気シンボルツリー!」

(みずき りょう)

34:樹形

 

 

 

 

ハナミズキの樹形

34:赤花

 

 

 

 

赤花(実は総包)

34:白花

 

 

 

 

 

白花

34:実際の花

 

 

 

 

 

 

これハナミズキの本当の花

34:実

 

 

 

 

 

実(食用にはならない)

34:葉

 

 

 

 

葉(ヤマボウシとよく似ている)

34:樹皮

 

 

 

 

 

 

樹皮(細かなヒビワレ特徴)

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りょうさんの:ほぼ毎日、エクステリア&ガーデンメモ」・・・NO2,313

 「現代住宅植栽考」 第33回・・・「ヤマボウシ」とその仲間たち①?

人気のシンボルツリーを紹介中。常緑三羽烏に続いては、落葉樹を取り上げます。まずは、超オーソドックスなヤマボウシとその仲間をピックアップ!

ヤマボウシは落葉樹の中でも最もオーソドックスな庭木。勿論、シンボルツリーの人気種でもあります。ただし、改良種(園芸種)、輸入された近樹種ハナミズキ、常緑ヤマボウシと言われるグループなどがあり、何がどう異なるのか、その違いを把握し使い分ける事もポイントの一つ。

「本家本元・ヤマボウシ」

ヤマボウシ(山法師)はミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属の落葉高木で、成長すると樹高10m近くになります。学名は「Benthamidia(亜属名) japonika」。この名前から日本に広く分布している樹木である事が想像されます。事実、本州、九州などに自生地が広がっています。ただし、日本固有種と言う事では無く、その分布範囲は朝鮮半島、中国などにも広がっています。

樹木としての最大の特色は、6〜7月に咲く白〜短黄色の花が美しく、樹形とともに大きな楽しみとなると言う点。ただし、実は花と思っている部分は4枚の総包(花を包むように生えている葉。花はその中心にある雄蕊・雌蕊のように見える部分)。同時に、総包が美しい事が、後で紹介する近樹種を含めた、ミズキ属共通の特色でもあります。

注:ヤマボウシは葉が完全に成長してから花を付けるが、ハナミズキは花が先行するか、芽吹きとほぼ同時に花が咲きます。

葉は楕円形で長さ4〜12㎝程度で、柔らかくラインが入っているのが特徴。また、9月頃に3〜5㎜程度の赤く柔らかな実を付けますが、甘く(酸味は無い)て食用になります。ヤマモモなどと共に、日本産の代表的ベリーと言う事も出来るでしょう?

ヤマボウシは病気も少なく、当然栽培も楽。一方、次項で紹介するハナミズキは炭疽病に侵され枯れる事があります。従って、抵抗力のあるヤマボウシと混植したり、両者の中間改良種を開発するなどの対策も講じられています。いずれにしても、人気が高いヤマボウシであれば当然のことながら、近年、多くの改良種も出回っています。前出のハナミズキとの中間種、食用を狙った実の大きなビッグアップル、ピンク系の花を付ける源平・サトミ、黄色い花を付ける金陽などがその代表。

その一方で、近年のアメリカからは艶やかなハナミズキよりも、清楚なヤマボウシ(当然、日本から輸入された物)の人気が高まっていると言った情報も入ってきています。ただでさえ、やや混乱状態にあるヤマボウシグループ。原点に帰り、もっと素性を明確にし清楚な原種に近い系統の物を普及させる事の方が重要。最近、筆者はそう強く感じるようになりました。

そこで本日の一口アドバイス。

「最近親戚が増えたヤマボウシ。でも、japonika(学名)の名をお忘れなく!」

(みずき りょう)

33:樹形(株立)

 

 

 

 

 

株立のヤマボウシ

33:花と葉

 

 

 

 

 

ヤマボウシの花(総包)と葉

33:実

 

 

 

 

実:甘くて食用になる

33:ピンク花

 

 

 

 

 

ピンク花の改良種

みずきりょう の:エクステリア&ガーデンメモ

 

りょうさんの:ほぼ毎日、エクステリア&ガーデンメモ」・・・NO2,312

 「現代住宅植栽考」 第32回・・・「ハイノキ」人気急上昇中の秘密とは?

シンボルツリー・常緑樹三羽烏の最後に登場するのはハイノキ。普及率はまだ低いのですが、潜在人気はNO1ではないでしょうか。なぜなら、ネットにハイノキ情報を流すとヒット数が急上昇するなど、興味(あるいは憧れ)を持つ人が極めて多きと想定されるから。ではハイノキの正体とは? 人気の秘密とは?

ハイノキはカキノキ目ハイノキ科ハイノキ属の常緑高木ですが、樹高は4m程度でそれほど大きくなる樹木ではありません。学名は「Symplocos  coreana」。分布地は本州の近畿以西・四国・九州・南西諸島など、結構幅広く自生しています。ただ、九州から普及していった木と言うメージが強く、天然樹の個体数は九州が一番多いのではないでしょうか。

上記の分類を見ても、ハイノキはかなり固有性の強い樹木(グループ)と言えます。また、日本に自生する他のハイノキ属の樹木としては、クロキ、チチジマクロキ、クロバイ、サワフタギなどがありますが、何れも繁栄種では無く殆ど馴染みがありません。

樹木の特色としては、枝が細くしなやか、葉は細長く小さいく鋸状、4〜5月に白く可憐な花を咲かせる、成長が比較的遅い、日当〜半日陰まで対応可能だがあまり強烈な直射日光には弱い、比較的暖地を好む・・・などを上げることが出来ます。庭木として見た場合は、枝が細く葉も細かいため常緑樹の中では非常に樹形がスッキリしています。三羽烏の中でもスッキリ系NO1と言えるでしょう。勿論、人気急上昇中の理由もそこにあります。

栽培に関しては、極端に陽光が強い場所、寒冷地と言った状況を避ければ、それほど難しいものではありません。ただ、成長が遅いため過度の剪定は避けるべき。しかし、見方を変えれば管理が楽と言う事にもなり、どうしても見苦しくなった時だけ軽めの剪定をすると言った程度でOK。ただし、値段は高目でこれが普及率が急速に高くならない理由でしょうか?

ハイノキと言う名前の由来は、その灰が染色材の色を繊維に定着しやすくする、媒染剤になるため。元々木灰は媒染剤として良く使われますが、ハイノキの場合は一般の灰よりその効果が高いと言う事でしょう。同効果が樹名にまでなっている訳で、一昔前まではそれ程染色に多用されたと言う事でしょう。

以上で、常緑樹三羽烏の紹介を終えますが、彼等には共通点があることをもうお判りでしょう。そう、いずれもスッキリ系であると言う事。「落葉樹にはスッキリ系が多いが、常緑樹には少ない」と言うのが一般的見解。でも、冬姿が寂しい、落葉の掃除が大変、などの理由で常緑樹が良い。こんな意見が多く聞かれます。そんな時は、やはり三羽烏登場と言う事に・・・

そこで本日の一口アドバイス。

「常緑スッキリ系NO1・ハイノキ! 成長が遅く管理も楽だが、やや高値!」

(みずき りょう)

32:ハイノキ株立

 

 

 

 

 

 

 

ハイノキ(株立):枝が細く葉も小さい

 

32:花と葉

 

 

 

 

 

ハイノキの花(4〜5月)と葉

 

32:ハイノキ&ソヨゴ

 

 

 

 

 

手前・ハイノキ、後・ソヨゴ:やっぱりハイノキの方が繊細?

 

32:サワフタギ

 

 

 

 

 

サワフタギ(ハイノキ属)

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